予告編やあらすじ等のまともな下調べを殆どせず、初見でスクリーンで観て純粋に驚きたい人間なので、今作も軽いノリで観に行った。だが途中まで観ていて、思いっきり何かに似ていると思ったら、今年のワースト案件のクリスチャン・タフドルップ『胸騒ぎ』のリメイクだと思い出した時点で絶望的な気分になった。評点2.8という今年最低点を叩き出した『胸騒ぎ』の批評をまずは思い出して読んで頂きたいのだが、率直に配給には『ファニーゲーム』と『ファニーゲーム U.S.A.』のように、『胸騒ぎ U.S.A.』とかそれとなく伝わる親切なタイトルにして欲しい。何かデンマーク人がアメリカ人になっていたり、そのアメリカ人一家がイギリスに渡り、夫が休職中など細かな部分での改変は見られるが、基本線は同じ。要は細かな改変はあろうが、観客を厭な気持ちにさせる出来事は殆ど同じで、これならばナオミ・ワッツへの加虐性で大ヒットを果たした『ファニーゲーム』のリメイクである『ファニーゲーム U.S.A.』と何が違うのと。
『ファニーゲーム』も大嫌いな映画だが、あえてミヒャエル・ハネケのオリジナルの先進性を問われれば、上流社会への若者のむき出しの憎悪を無邪気に紡ぐことで、かえって深刻な階級社会そのものを浮き彫りにした優れた批評眼があったのだが、リメイクはほとんどハネケ版の能がない丸写しだった。いつも「ひょっとしたらひょっとしそうで、終わってみればまたしてもひょっとしない」ブラムハウス・プロダクションによって製作された今作も途中までは、『ファニーゲーム』の凡庸なリメイクである『ファニーゲーム U.S.A.』と殆ど同工異曲の様相を呈す。この様な僅か半年余りでのスピード・リメイクに「もういいかい」と言われた瞬間に「もういいよ」と言いたい気持ちには駆られたのだが、グローバル資本主義が蔓延る現在の世界線で突如中盤以降、いかにもアメリカ映画的な起承転結の物語への大胆な改変劇が幕を開ける。ハッキリ言って、『胸騒ぎ』に感じた胸糞の悪さはこのリメイクでは見事に中和される。その時点で『胸騒ぎ』を不快に感じた人ほど今作を観よと言いたいのだが、やはりオリジナルの北欧テイストの禁欲性こそが世界観のキーだったと思わされる奇妙なリメイクだった。