・ジャンル
サイコホラー/スリラー/ファウンドフッテージ/Disturbing Movie
・あらすじ
ひょうきん者の父アンディとしっかり者の母シェイラ
悪ふざけが好きな兄ジョーと思春期のジュディス
キング家の4人は仲睦まじいごく普通の家族だった
しかし徐々に彼らの暮らしは父アンディによって歯車が狂っていく…
始まりはアンディが昇進したら海沿いの家を買い引っ越すと言い出した事だった
隣人クレアに密かに想いを寄せるジュディスは気が進まなかったが昇進が決まったと彼が言い出すと3人は幸せそうな様子
この頃からジュディスは父の変化に気付き始める
それは彼の手違いで物件に別の買い手が付いてしまった事を機にジワジワとエスカレート
些細な遊びに異常なこだわりを見せてジョーを怒鳴りつけ、夫婦喧嘩が増え、深夜に1人で物に当たる…
違和感を抱いたジュディスは元の父に戻ってもらいたい一心で今の姿を記録する様になっていった
やがてアンディの行動は一線を超えた物となり、何かを勘付かれまいと過剰に明るい振る舞いを見せていく
そして彼女は父の秘密をただ1人知る事となるのだが全てが記録されたビデオカメラを彼が何も知らず家族や家に招いた者達の前で再生してしまった事で狂気は更にエスカレートしていき…
・感想
POV/ファウンドフッテージ/モキュメンタリー強化月間中に存在を知りFilmarksに登録申請をしていたファウンドフッテージ作品
無事一番乗りでレビュー!
徹底して一般的な家庭のホームビデオの様式を崩さず父アンディの変化や歪な愛情、狂気の芽生えが見せられていく様が生々しくDisturbing Movieとされるだけある内容だった
独断で突飛な行動をしては妻に諌められる家族を愛するひょうきん者でしかなかった父親が選択を誤り続け闇に堕ちていく姿が妙にリアルでそんな彼を最後まで支えようとしていた娘ジュディスの末路も含めてなかなかに痛ましい…
きっかけさえあればいずれ壊れる家庭という物が低予算だからこその身近に感じさせる空気感も伴って何とも言えない厭さを放っていたのが良かった
ジュディスが秘密に近付いていく過程も早々と露わにする事なく丁寧に描かれていたと思う
狂人視点でありながら全く共感が出来ない世界観は「Be My Cat: A Film for Anne」とダブる物があり、救いの無い展開と純粋な狂気性は「Family Movie」のそれに近い
それでいて背景に家族愛がある事が独特な気持ち悪さを演出していて印象的だった
狂気を持つ者の孤独という点では「クリーン、シェーブン」の様でもある
また1つの家庭を描きつつも近隣住民や友人、不動産屋など外部の人間との関わりも端々に挟まれていた事で“隣人”という物に誰もが潜在的に抱える恐怖心や内情の見えなさといった部分を覗き見しているかの様に巧みに感じさせてくる点もヒトコワ作品ならではで好き
決定的な異常行動に至る以前も冗長ではなく1人で抱え込みどうにか事の収拾を図ろうとする父とそれを見ながらどう助ければよいか思い悩む娘という構図によって意義がしっかりと果たされ続けていて巧い
個人的に良い意味で最悪だったのが家族に秘密がバレてからの行動
まともな感覚があれば逆効果なのは明白だけど彼の感覚ならそうしちゃうだろうな、という説得力がある
結局、最後まで愛情が独り善がりなんだけど家父長制的な家庭だと実際に起きてしまいそうな事なんだよなぁ…
図らずもその引き金を引いてしまったのが唯一の味方であるジュディスというのがキツい…
ファウンドフッテージや鬱映画が好きなら刺さる作品だと思うけど地味ながらジワジワと心を沈ませてくる内容なので観るタイミングは考えた方が良いかも…w