YouTubeに流れている舞台挨拶で、つげ義春を台湾で撮ったらどうだろうというのが、企画の始まりだったと片山慎三監督が述べている。
台湾に昭和のセットを組むのではなく、ロケでそのままを背景としているのだが、なんともつげ義春に似つかわしい。ゴミゴミとして汚れていてうらぶれて、そのくせ生温かく潜り込んだまま這い出したくなくなるような風景。昔の日本を思わせながら日本ではない亜細亜のどこかを舞台に、つげ義春作品のコラージュを真ん中にした物語が紡がれる。
先の舞台挨拶や新聞の映画評で触れられているので書いてしまうが、これは夢なのだ。うつつに目覚めたとき、そのありさまに驚愕するが、それも現実なのかは分からない。物語が進むにつれて、夢とうつつとが地続きとなっていく。本当は、主人公の漫画家義男は、死んでいるのかもしれない。
ダルトン・トランボにオマージュを捧げているような作品。
「無能の人」の監督・主演である竹中直人が、怪しげなアパートの大家で出演しているのが、嬉しい。