このレビューはネタバレを含みます
室井慎次は動かない。
これに尽きる。
還暦を迎え退職し、市井の人間として2人の子供を預かる男。
そんな彼にできることは少ないし、劇的にヒロイックなことは起こらない。
将来に備えて、子供たちに何かあれば毅然と立ち向かう、という覚悟がある。
事件にも子供たちの問題にも、無理に介入しない男の背中。
この姿勢は映画としても、大人としても難しいことだと思う。
室井慎次は踊らない。
そのスタンスを貫き、エンタメ的なカタルシスを無理に盛り込もうとしない穏やかさを評価したい。
誰でも何にでも噛みついてしまう、こんな時代だからこそ、じっと耐えて見護る。
そんな室井慎次が輝いている。