このレビューはネタバレを含みます
自閉傾向がある学生とADHD傾向がある学生を含んだ女性5人バンドの精神病理レズビアン恋愛アニメーション映画。
もともとテレビアニメを観たのでいったんぼざろと同じく3.0にしているのだが、個人的にはちょっと低め。バンドリの大ファンかというとそうではなく、川崎方面から入ってアニメ履修したクチの人間です。
劇場化でお決まりのマナー啓発動画、「前の席を蹴るな」って一体どこの誰がそんなバッドマナーやるんだよと思ってたし、他の映画でもキャラクターに座席を蹴らせることは無かったのですが、この映画では思いっきり蹴らせてて笑ってしまった。音響チェックするためのリハでいきなりギター弾くやつはまあ座席ぐらい蹴るかと思いつつ、開始数秒で元を取った気持ちになった。
冒頭に言った通りこの映画はバンド映画ではなく、昨今のガールズバンドブームとはリアリティラインが低く、部活ではないがなぜかみんなバンドをやり、誰もFender/Gibsonを持ってない、ライブハウスにあるギターアンプはなぜかMarshall/RolandではなくLaney、割引があるとはいえ高校生が平気で連日スタジオ予約できる。楽奈のメインギターであるPotbellyはそもそも1999年から開発されて2000年代に発売されたモデルのはずで、それをおばあちゃんが使ってたということなのでマジでSFなのかもしれない。ライブのために労働を強いられるぼざろやそもそも学校に通っていない無職スタートのガルクラとは戦う敵が違っている感じがあります。チケットノルマが絶滅した謎の世界。
で、前述の2作に比べると「完全に成長に関して問題がある主人公が折り合いをつけて社会とやれるようになる」みたいな要素が全然なく、「個々人の単位で見ると全員何も性格は変わってないけど、全員集まると多少マシになる」みたいな構図になります。性格的な成長というより、トラウマの克服が主になっている。どちらかというとガルクラに近いのか。これを期待するのはやっぱり一定以上の年齢のオジサンのような気がするし、「説教臭くはないけどすごくギスギスした話」という一周してやたら器用なストーリーテリングではないでしょうか。
新規カットは確かに多かったし、楽奈が主人公で行くのかと思ったらそうではなく途中から元の話に戻した、という感じの印象を受けました。愛音が主人公のほうが見やすかったような、アニメ版のように最初にCRYCHIC解散シーンが来ないとテーマがわかりづらいような。というのも、そよが提起する「なんで春日影やったの!?」という問いに対しての答えは「いやなんか楽奈がアルペジオ弾きだしたから……」しか出てこないように見えるからです。今回の追加カットで、「いや楽奈は天才なので、燈のMCに合わせるために咄嗟に覚えてたフレーズを弾いたんですよ」という説得力が出たような……出ていないような。
まあ、「これ観たらアニメ観なくていい?」という質問に関してはノーでしょう。なんかちょっと足らない感はある。ただアニメ版は楽奈の描写がめちゃくちゃ足らないので両方観てください。
で、「は?じゃあ何?お前この映画不満なの?(※立希ボイス)」と聞かれたらそこまでではなくて、MyGOバンドの強みは燈のボーカルだと思っているのでふつうに「劇場で観れてうれしい」という感情はあるんですよね。しかし小さいスクリーンの劇場で観てしまったため、劇場のアドというのが少なく……後半はイオンかTOHOで観るぞ!