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まるのmoimoiのレビュー・感想・評価

まる(2024年製作の映画)
5.0
現代アートの消費を皮肉りつつ、消費されていく主人公に対しても社会性のなさを指摘するような厳しさが向けられているようでもあり、多層的な作品だと感じた。
サワダはただ芸術に身を浸していたいだけだが、バイトの同僚のミャンマー人が差別されてもやめろと言えない。大きな主語で謝るしかできない。
同じアーティストのもとで働いていた女性が社会運動に身を投じても、ただ遠くで見ている。
(描き方として、この手合いの運動を揶揄しているようでちょっとどうかとは思うが)
社会と切り離された表現など存在しないというのに。
さわだが消費されるのはある種の罰のようにも思った。

堂本剛の佇まいの演技がいい。
空虚なまでに穏やかで無味なさまを、ただ歩いているだけで発散できる。私はファンではないが、凄まじい役者だと感じた。
ただ、この輪郭の曖昧なキャラクターの良さに、エンディングの曲(とても良い!)が明確な感情を与えてしまったような気がする。
堂本剛の楽曲を使うなら、アンビエントなサウンドでメッセージが曖昧な新曲を書き下ろしてもらってもよかったのでは?
彼はそれができる才能を有していると思う。
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