派遣をしている直子は、仕事を半休し売れないミュージシャンの彼氏に生活費を渡す
その帰り道、母親に会うため連絡を取っていると、弟の浩平が自転車で事故を起こし、相手に怪我をさせてしまったと聞く
浩平は相手への検査入院費としてすぐにでも10万円が必要だと泣きついてきたらしい
母親も持ち合わせが無いらしく、直子はとりあえず母親と会って相談することにする
しかし銀行で口座を確認するも、直子にも持ち合わせは無かった
母親と会うまでの間、直子が公園のベンチで休んでいると、近くのベンチで横になっている会社員風の男性の鞄から、着信音が鳴り響く
ところが男性は動く気配が無く、直子は金が入っていることを期待して、男性の鞄から顔を覗かせていた茶封筒を盗んでしまい・・・
国内外の短編映画祭にも出品されたサスペンス・ドラマ作品
誰しも大なり小なり経験があるだろう「魔が差す」ということをきっかけに、周囲から向けられる怪しげな目線や嫌な気配
そんな日常の延長にありそうな、地に足の付いた恐怖感を描いた物語
誰かが自分を責めているような感覚は、罪悪感から来るものか、それとも・・・
というような、あやふやで底知れない恐怖感を描いている
主人公の直子も、年下っぽい彼氏に貢いでたり、謎の外国人男性を避けようとしたり、やや自意識過剰な一面を覗かせていて、あくまでこの恐怖感は魔が差した彼女の「嫌な感覚」であるようにも演出されてるのが特徴的
なので恐怖演出も直子の妄想なのかもしれないし、そうでないかもしれない
そんなある意味 幻想的な表現を、ありきたりな日常を舞台に描いているのは面白かった
そこから梯子を外すような展開からのラストも嫌な余韻があって好き
全体的に地味にも観えるけど、表現したいことはしっかり表現してるのは見て取れるし、ざらついた質感の映像は今時珍しい8ミリでの撮影という こだわりも感じられる
短編ながら独特の魅力のある作品なので観ましょう