このレビューはネタバレを含みます
かつてアメリカ陸軍の将軍として“ハルク”を追い詰め、“ソコヴィア協定”によりヒーローチーム“アベンジャーズ”を解散に追い込んだ張本人であるサディアス・ロスは、アメリカ大統領に就任を果たす
非情な冷血漢として知られれていたロスだったが、ハルクとの一件で疎遠となってしまった娘ベティとの関係に悩み、生まれ変わることを胸に誓っていた
5ヶ月後
スティーブ・ロジャースから盾を受け継ぎ、正式に“キャプテン・アメリカ”を襲名したサム・ウィルソンは、相棒のホアキン・トレス(“ファルコン”)と共に、メキシコでとある闇取引を追っていた
取引現場である教会を占拠し買い手を待っていた“サーペント団(・ソサエティ)”に強襲を掛けたサムは、“サイドワインダー”と呼ばれるボスは取り逃すも、トレスと協力して取引されようとしていた現物を奪還して事態を収拾
その後、帰投したサムはトレスに自らの師であるイザイア・ブラッドリー(“ブラック・キャプテン・アメリカ”)を紹介する
イザイアはアメリカ政府による人体実験で“超人兵士(スーパー・ソルジャー)”となり朝鮮戦争を戦い抜くも、その後の30年間 投獄され歴史から名を消されていたが、サムの活躍で名誉を取り戻した人物だった
イザイアはサムの活躍を評価しながらも、キャプテン・アメリカがロスのような男の言いなりに動いていることに苦言を呈す
そんな折、サムはロスからホワイトハウスで行われる国際会議へ招待される
サムはイザイアを同席させることを条件に参加を承諾し、後日トレスを伴い3人はホワイトハウスへと赴く
そこではロスが、日本の尾崎首相を含む各国の代表を集めていた
実は数年前、インド洋上に突如として出現した“セレスティアル島”から、地上最強の金属“ヴィブラニウム”を超える硬度を持つ未知の金属“アダマンチウム”が発見されたことで、その利権をめぐり国際的な緊張が高まっていたのだ
ロスはこのまま危機的な状況に陥ることを回避するため、国際条約を結びアダマンチウムを各国で平等に取り扱えるようにしようと動いていた
そんな中、日本が精製に成功したアダマンチウムがサイドワインダーに強奪される事件が起こり、それを先日サムが解決したのだ
ロスはサムに対しその働きを感謝すると、ヒーローを必要とする人々の声に応え、アベンジャーズを再建してほしいと依頼するのだった
しばらくしてロスは各国に向けて演説を行い始めるが、その途中で音楽がかかった瞬間、イザイアと4人の男が突然 暴れ出し銃を発砲
ロスに銃を向けたイザイアは逃亡を図るも、その跡を追ったサムの前で正気に戻り、他の4人と共に逮捕されてしまうのだった
サムはこの事件の捜査を願い出るが、ロスは容疑者との関係性や各国の緊張が高まっていることを受けそれを却下すると、捜査責任者として安全保障補佐官のルース・バット=セラフを指名
イザイアが事件の間の記憶を失っており、マインドコントロール状態にあったと判明し、サムは一連の事件の裏に黒幕がいると確信し、独自に捜査を開始するが・・・
マーベル・シネマティック・ユニバース35作目
『アベンジャーズ エンドゲーム』、そしてドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を経て、スティーブから盾を受け継いだサムをタイトルロールにした新生キャプテン・アメリカ第一弾
シリーズの興行的な低迷やハリウッドのストライキ、“征服者カーン”をメインヴィランにした“マルチバース・サーガ”の大幅な見直しもあり、やや個々のストーリー性にこだわり作品としての質の高さを目指していたここ最近の作品の傾向があった中で、『インクレディブル・ハルク』の事件や『エターナルズ』の“セレスティアルズ”の遺体の行く末など、ユニバースの繋がりも踏まえた世界観の拡張も行ってたのも印象深い
そういう意味でも、往年のシリーズらしい雰囲気を兼ね備えた作品になっている
作品としては、『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』と同じようなリアル志向のサスペンス・アクション
また同時に、長らくシリーズを脇から支えてきたロスが大統領となりメインキャラに昇格していることもあり、政治劇的な一面も併せ持っている
謎の事件の黒幕を追うストーリーとしてはテンポも良く面白くはあるんだけど、メインヴィランの脅威がイマイチ表現しきれていないのと、やや隠し球っぽい存在の“レッド・ハルク”がガッツリ宣伝で使われてしまっているので、展開の魅力は思ってたより低めだったかな
とはいえキャラクターとしての魅力は強くて、故ウィリアム・ハートに代わりハリソン・フォードが演じたロスが深掘りされてるのも印象的だった
これまでヒーロー達に立ち塞がるような役回りのロスが抱えていた苦悩と、変わろうという決意が物語の中心にあり、もう1人の主人公と言える存在になってる
ロスに注目すると、セカンドチャンスを掴み、忌まわしい過去と対峙するなんていうヒーローもの王道とも言える展開になってるので、そうして考えれば彼もまた本作でヒーローになったのかもしれない
やってたことはカスだが
そしてサム自身も『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で盾を受け継ぐ重責は十分描いていたこともあったけど、それでもなお超人ではないサムの苦悩と、サムだからこその存在の意義がしっかり描かれてて良かった
また出番は少なめだったけど、ジャンカルロ・エスポジートが演じるサイドワインダーも、ハードな物語にマッチした悪党っぷりで良かった
余談だけど、当初は彼らサーペント・ソサエティがメインヴィランの物語も検討されてたので、個人的には再登場なんかも期待したい
もちろんアクションとしても、これまでのキャプテン・アメリカには無かったスタイリッシュな空中戦から格闘アクション、レッド・ハルクとのド派手な最終戦まで、満足行く出来になっている
全体的にはマーベル映画らしさに回帰している感もあって、良い点もあれば悪い点もあるような作品
日本人としては意外とフューチャーされてた日本描写に嬉しくもあり、違和感を感じてしまったところもあったけど、まあマーベル世界の話だし些事ではあるかなという印象
大きくは進展したわけではないけど、アベンジャーズの再建や、“X-MEN”の1人“ウルヴァリン”に深く関わるアダマンチウムの存在など、シリーズを通した軸となるストーリーや未来へ向けた布石も打たれていて、ワクワクするような点もあったので、新たに飛び立つ新生キャプテン・アメリカの勇姿をぜひ観てほしい