このレビューはネタバレを含みます
牢屋の中で思いを紛らわす手段が、「好きだった映画の内容を思い出すこと」なのが本当にオシャレで、それでいて刑務所生活がどれほど虚しいものなのかを感じてやるせなかった。
モリーナの、「刑務所を出た所で所詮空っぽ」という思いが、ゲイであることで社会からどのような扱いを受けているのが痛いほど伝わってきた。愛してくれる人もいない。子供を産むことだってできない。本当の女性にだってなりきれない。この虚しさはどこにいても変わらない。
最後にモリーナが、革命派に打ち殺されてしまうところが、世の中の善悪の危うさを感じた。愛した人が信じた思想だからといって、必ずしも正義であるとは限らない。平気で人を撃ち殺してしまえる狂気を併せ持つ団体。
自らが助けた男を食べてしまう蜘蛛女という存在の危うさとも重なって考えさせられた。原作も読んでみようと思う。