都部

フロム・ダスク・ティル・ドーンの都部のレビュー・感想・評価

4.2
最高。殺伐としたクライムサスペンスの導入を斜め上の方向で裏切る中盤の転換点のパルプぶりは痛快で、ゲッコー弟の無軌道な殺意によるヒリヒリとした緊張感が場を支配する前半と無関係に思えた要素の数々が思わぬ形で拾われていく怒涛の後半という二段構成が相補的に面白味の底を引き上げている秀作である(脚本/主演共に務めるのはクエンティン・タランティーノその人で、性犯罪者であるゲッコー弟の存在感を思うに俳優としてもプロに見劣りしない活躍を見せるのが本作だ)。

この映画の本当の核である『馬鹿馬鹿しいこと』がぬるりと始まるジャンル変化の瞬間は唐突で予測不能であるからこそ観客は驚くし、そこからそのシチュエーションにおいて期待される展開が矢継ぎ早に投入される爽快感は何物にも変え難いものがあるだろう。
本作は一切の前情報を避けて観るべき作品であるから、どうしても物語の核に対して曖昧模糊とした口振りになってしまうけれど、本作の魅力はこの前半と後半の雰囲気の一変のみならず作品ボルテージの上昇に合わせた舞台変化の妙にある。

兄弟は果たして国境を超えられるのか否かという緊張感漂う前半は寂れたマーケット/コテージと状況設定に応じた場で惨劇が展開されるが、その後のおっぱいバーの低IQなルックは明らかに雰囲気の変化を感じさせ、双子と人質家族一同の奇妙な連帯感の芽生えが一種の陶酔的な小気味良さを産んだ途端にアレが始まる──このバーに登場する無法者達の馬鹿すぎる装備や相性にB級臭さが溢れているのは分かっていたのに、アレを予想出来なかったのは若干の悔しさがあるが、アレに気持ちよく出し抜かれた後のショットの数々はどれも鮮烈かつ刺激的でテンションを損なわずに最後の最後まで駆け抜ける手腕は流石としか言いようがない。
都部

都部