キャストが全員良い。冴えない新入社員だった北村匠海が裏切りをきっかけに豹変する様。本当に困窮している人に対して、のべつまくなしに捲し立て論破を試みた時の表情はまさに別人。
河合優実の軽さと空虚さも絶妙。本当の愛をようやく見つけつつあったが、既に構築された逆らえない関係性を前にすると、その先を考えた時に踏みとどまってしまう。そしてまんまと利用される。吸い込まれるような無力な表情だった。
伊藤万理華の仕事ができるけど、とっつき辛い先輩感も上手い。もう少し角を立てずに話せないのか?と思うんだけど、ああいう人間こそ裏の顔を見ると情けなくなる。ちょっと口を曲げて話す話し方とか嫌味ったらしくて絶妙。
涙ひとつ見せなかった河合優実に対して、不倫相手に復縁を迫るよう泣き叫ぶ様は滑稽だった。窪田正孝のホスト上がり風半グレはその人にしか見えない。喧嘩をすれば弱そうだけど、威勢が良いのと頭が切れるので逆らえない。人を小馬鹿にした高笑いも小物感があって良い。「人生終わらせたいですか〜?」とインタビュー風に尋ねる様とかもう凄すぎる。
竹原ピストルの本当に生活保護をもらってそう感は相当。並の俳優では出せない本物のオーラ。小手先で考えたアイデアを実践し、ケースワーカーを欺く小悪党が似合う。
木南晴夏の哀愁漂う出立ちと、疲れ切った表情に圧倒される。本当に助けが必要な人は彼女で、お話的に必要性があるから入れられたような役柄だった。ここまで振れ幅の出せる役者さんなんだと改めて感じた。
ラストのわちゃわちゃ感は賛否あるかもしれないけど僕は存分に楽しめた。笑ってはいけない題材なのに何故か笑ってしまう。城定監督らしい極上のエンタメ映画でした。