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グランメゾン・パリのshinodogのネタバレレビュー・内容・結末

グランメゾン・パリ(2024年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

年明けから2本も映画館で鑑賞できてとても良い一年の始まりな気がする。
ドラマ版は全て鑑賞済みで、準備万端な状態での鑑賞。
本職が料理人の私からしても気になる本作。
かなり感情移入しやすいストーリーのため採点甘めになってしまうが果たして…

・良いところ
まずドラマ版でもそうだったが、料理人へのリスペクトが半端なく滲み出ていて、ほとんどストレスがなかった。
そのリスペクトがあるからこそドラマ版では岸田周三氏、今回の映画版では小林圭氏の協力も得られているのだと思う。
個人的に懸念ポイントだったのが料理監修が変わると料理の趣きがわかるので、ドラマ版での尾花の料理(岸田周三氏監修)とは料理スタイルが変わってしまうのではないか?という部分。
結果、尾花自身のみの発想ではなく、チームの発想を集約することによって完成させるという着地もしていて、なるほどなと感心した。
異国の地で良い食材が手に入らないやフランス料理本場の地でやるプレッシャーというのもきっと小林圭氏の苦悩が反映されているのだなと観ているこちらも思わずため息が出そうになってしまう。
前半のストレスが溜まる展開を過ぎてからの全ての歯車が綺麗に回っていく感じは観ていてとても気持ちが良かった。
今回はコースの構成じっくりと丁寧に描いてとても好感が持てた。
料理人は側から見たらさぞ大変そうで、人によってはそんな大変な思いしなくてももっとお金稼げる職業あるのにって思うかもしれないが、
あのお客様が美味しいと感動している瞬間を見るのがたまらなく楽しいから続けられるし、自分の時間を割いてまで料理に没頭できるのである。
その一端をこの映画はちゃんと描けていると思った。

・悪いところ
ドラマ版でも感じることだが、ちょっと規模感が小さく見えてしまう。
従業員もまるで尾花の店以外に働く場所がないような感じになっている。
東京ではギリギリ成立したが、フランスのパリともなるとそれこそ世界に轟く名店揃いのため、あんな振る舞いをしていたらどんだけ周りがフォローしても総上がり(全員辞職)になってしまうだろうと思う。
海外は余計にその辺はシビアなはずである。
もちろん総上がりしてしまったらストーリー的に元も子もないのだが…
新メニューの考案もメインは良いとして、デザートの味噌の件は流石に全種類の味噌試してから悩むでしょうと。
パティシエの彼ならその辺もちゃんとやりそうなのに1種類だけ試すというのはちょっと考えられなかった。
明らかにあの寝耳に水だったという展開を描きたいだけのように見えてしまってそこは残念だったかなと。
さらに残念だったのが、ミシュラン発表シーン。
ものすごく狭いしセット感満載で劇場版とは思えぬ仕上がりになっていて急に冷めてしまった。
予算が足らなかったのだろうか、、
ドラマ版の方がちゃんとしているように見えたのだが…

とはいえ、この作品をきっかけに少しでも料理人かっこいい!やってみたいっていう人が増えてほしい。
料理人が減ってきている昨今、こういう作品があってとても嬉しく思えた作品であった。
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