矢嶋

太平洋奇跡の作戦 キスカの矢嶋のネタバレレビュー・内容・結末

太平洋奇跡の作戦 キスカ(1965年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

某機動戦艦でもパロディーされた、大和魂溢れる名作。

とにかく、緊張感の演出が見事で直接的な戦闘シーンがほとんどないにも関わらず手に汗握る。安全策をとるか、急ぐべきか。敵に見つかるリスクを承知で砲撃や通信を行うか、控えるべきか。そのまま接岸するか、危険でも迂回するか…といった極限状態での選択が連続する。焦る気持ちをじっと堪えて判断をくだす、大村少将の忍耐力と決断力に惹きつけられる。
キスカに将兵達が整然と並んだ様と、断腸の思いでそこから引き返す場面や、ギリギリの状態で島を迂回する場面は圧巻だった。

三船敏郎を筆頭とした豪華キャストによる貫禄とすごみに溢れた演技はさすがで、彼らのやりとりや連帯感だけでも満足できる。意外なところだと児玉清も出ている。

時代設定的に死に急ぐ連中が多いのかと思いきや、いざとなれば玉砕の覚悟はあっても命と尊厳を何よりも重視していた。だから、最後まで諦めずに生きようとし、助けようとするし、装備は捨てても遺骨だけは持ち帰る。全員が見事生還した際はこみ上げてくるものがある。

田中友幸、円谷英二、有川貞昌…と本作は特撮作品でもある。キャストも平田昭彦、黒部進、久保明、二瓶正也…と東宝特撮おなじみのメンツだ。特撮の観点で言うと、怪獣や光線といった非現実的な存在がないとこんなに迫力のある特撮が作れるのかと驚いた。直接的な戦闘が少なく、意図的にモノクロにしているとは言え、非常にレベルが高い。

撮影技術、演技、緊張感の途切れないストーリーと見事な作品だった。
矢嶋

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