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The Step(英題)
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『The Step(英題)』に投稿された感想・評価

[行き先を知らぬ者は最も遠くまで辿り着く] 100点

人生ベスト。アレクサンドル・レフヴィアシヴィリ長編三作目、初カラー作品。いきなり映し出されるのは狭い書斎にこれでもかと物を置いた雑多な風景だが、赤茶色のタンス、水色の壁、緑の植物という色彩の豊かさに感動を覚える。レクヴィアシュヴィリ、カラーもいけるんかい。しかも、過去ニ作とは違って都会の一部屋なのに、あり得ないほど植物に囲まれている。ナウシカの地下研究室くらい、そこかしこに植物があるのだ。主人公アレクシは植物学を専攻する学生で、冒頭で登場した家は彼が父親と継母のいる実家から引っ越しを決めた新たしい家だった。アレクシを中心に、大家の女性やその娘、友人のミト、両親、恋人?とその兄姉、権威主義と官僚主義に凝り固まった今の教授と引退してしまったかつての恩師などが画面に入り乱れるが、どのシーンもアレクシの部屋(ナウシカの地下研究室)のようなごちゃごちゃした室内だけで展開され、会話は定型文の挨拶で埋め尽くされる。つまり、どこも代わり映えのしない、物理的に窒息しそうな、それでいて細部まで美しいという矛盾した空間の中で、時間だけが過ぎていっている。この徹底したシンプルな会話と場面の反復、ツュルヒャー兄弟『The Girl and the Spider』を思い出す(あそこまでシステマチックではないけど)。

中盤では風邪をひいたアレクシを看病するため、友人たちが彼の部屋に集結するんだが、なぜかベッドを物質で溢れた居間に移動し、その周りで友人たちがそれぞれの行動を互いに反復しあったり、繊細に動き続けるフレームの中に入っては消えたりを繰り返すなどツュルヒャー度が上がってくる。魚を一匹持ってきて眠るアレクシの横で食べる人がいれば、なぜか部屋の隅にあるシャワー室の中にはロバがいるし、ミトは部屋の地下室でマッシュルームを勝手に育ててるし、端的に言ってカオス。人ん家だぞ、ここ。

前ニ作では森と故郷/祖国を画面の中で重ね合わせていたが、本作品では全ての出来事が室内で起こることからも分かる通り、"部屋"そのものを権威主義/規範/決まったレールとして画面の中で重ね合わせている。だからこそ、窒息しそうな空間と定型文挨拶をひたすら反復することで時間経過も曖昧にし、規範の中に閉じ込めようとする。恩師の死を知ったアレクシは、彼が勤めていた山村の学校に教師として赴くことを選び、映画は突然部屋から抜け出す。彼が自分の人生を掴んだ瞬間だった。
リコ
3.6
ジョージアのアレクサンドレ・レフヴィアシヴィリ監督、初鑑賞。ジョージアの映画人たちからは尊敬と親しみを込めて"サシャ"と呼ばれていたらしい。
他の作品を観ていない(というか鑑賞困難)ので、この『The Step』だけを見て何も言えないけど、かなり実験的でシュール、内省的な映画を撮る人なんだろうなと思う。

植物学者を志す青年アレクシ(演:美少年時代のメラブ・ニニッゼ)が親元を離れて未亡人の邸宅の一室を間借りするが、そこには人から人、物から物、そしてアレクシ自身も部屋から部屋へと移動をくり返す。反復される場面や、コントロールされた人物の身ぶり手ぶりには小津、ゆるやかにズームイン/アウトするカメラには溝口からの影響を感じたりする。(実際にレフヴィアシヴィリ監督は溝口健二を参考にしていたようである)所々に置かれた日本関連の小物も気になる。

「人生を新たに始めるためには、最初の一歩(The Step)を踏み出さなくてはならず、別の人生を進むには、古い人生を捨て去る覚悟が必要だ」と監督が語ったそうだが、狭い部屋にどやどやと集う人々、運び込まれる物、ロバに猫に仔犬(レコード盤に乗せられてくるくる廻る姿が愛らしい)は、後に混乱するジョージア国内の世情を予見していたのだろうか。メラブ・ニニッゼは国を出てドイツやイギリスに活動の場を移し、友人役(地下室でキノコを密造するやつ)のレヴァン・アヴァシゼは内戦に出征したまま帰らぬ人となった。

終盤、部屋の堂々めぐりから抜け出したアレクシは、荒涼とした岩場で年かさの男とすれ違うが、あれはもしかすると未来の彼自身なのかもしれない。


☆この拙文を書くために、はらだたけひでさん著『ジョージア映画全史-自由、夢、人間-』(教育評論社、2024年)を参考にさせて頂きました。御礼申し上げます。