人生ベスト。アレクサンドル・レフヴィアシヴィリ長編三作目、初カラー作品。いきなり映し出されるのは狭い書斎にこれでもかと物を置いた雑多な風景だが、赤茶色のタンス、水色の壁、緑の植物という色彩の豊かさに感動を覚える。レクヴィアシュヴィリ、カラーもいけるんかい。しかも、過去ニ作とは違って都会の一部屋なのに、あり得ないほど植物に囲まれている。ナウシカの地下研究室くらい、そこかしこに植物があるのだ。主人公アレクシは植物学を専攻する学生で、冒頭で登場した家は彼が父親と継母のいる実家から引っ越しを決めた新たしい家だった。アレクシを中心に、大家の女性やその娘、友人のミト、両親、恋人?とその兄姉、権威主義と官僚主義に凝り固まった今の教授と引退してしまったかつての恩師などが画面に入り乱れるが、どのシーンもアレクシの部屋(ナウシカの地下研究室)のようなごちゃごちゃした室内だけで展開され、会話は定型文の挨拶で埋め尽くされる。つまり、どこも代わり映えのしない、物理的に窒息しそうな、それでいて細部まで美しいという矛盾した空間の中で、時間だけが過ぎていっている。この徹底したシンプルな会話と場面の反復、ツュルヒャー兄弟『The Girl and the Spider』を思い出す(あそこまでシステマチックではないけど)。