イングランドのどこか。
発明家のウォレストの家では、大量のガジェットが可動している。
彼の生活をサポートする愛犬のグルミットと暮らしているのだが。
雑用ロボット、ノーボットが完成。
ノーボットはグルミットが管理していた緑の庭を瞬く間に刈り込んでしまう。
監督は、ニック・パーク。マーリン・クロシンガム。
脚本は、マーク・バートン。
2024年にNetflixで公開されたストップモーション・コメディ・アニメ映画です。
【主な登場人物】🏡🌼
[アントン・デック]ニュース主任。
[ウォレス]発明家。
[オンヤ]ニュース記者。
[グルミット]愛犬。
[ノーボット]雑用ロボット。
[フェザーズ・マッグロウ]ペンギン。
[マッキントッシュ]主任警部。
[ムカジー]女性警部。
【概要から感想へ】🤖✂️
制作会社はイングランドにあるアードマンアニメーション。
子供が鶏肉を食べられなくなる『チキン・ラン』で有名なコマ撮りアニメの会社。
長編映画としてはシリーズ2作目で、19年ぶりの新作です。
パーク監督は、1958年生まれ。イングランド出身の男性。
1985年から同会社で働くベテランで、
アカデミー賞に6回ノミネート、うち4回受賞の重鎮。
脚本のバートンは、1960年生まれ。イングランド出身の男性。
1988年にはラジオで脚本を書いている。
テレビを主戦場としたコメディの専門家。
『映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』の監督でもある。
35人働いて1日5秒制作。はかどると1週間で1分。
ちょっとずつ動かして膨大な日数のかかるコマ撮りで、1時間15分の長編きた。
アカデミー賞の長編アニメ賞へのノミネートを目指すのじゃ。
(そして無事に7回目のミッション達成)
……あれ、主人がつるつるで、羊が出てこない。
(それ、ひつじのショーンな)
🐶〈序盤〉🛀🧽
庭の手入れ。
生垣の高さが低いとか。ようやく咲いた花を速攻で切られて花瓶にいけられるとか。
毎年楽しみにしていた花畑を根こそぎ耕されて野菜畑に変えられるとか。
共同の場合は、かならず他人との趣味の不一致がおきる。
心理学の箱庭療法のようなもので、庭の趣味は人それぞれで答えがないので、妥協するしかない。
まるで夫婦生活のようだ。
ノーボットVS犬。
AIの進歩が著しい現代的な題材が採用されている。
犬は人間の手伝いをするために交配された生き物なので、仕事がなくなると発狂する。
AIはライバルであり、彼らの台頭は死活問題。
グルミットの場合はよく育った利口な犬なので反応が泣ける。
🐶〈中盤〉🏍️👮♀️
ノーボットが大量発生して、すべて手作業で動かしているので凄まじい。
映画らしくセットも豪華で、職人の技を堪能するだけでも満足感が得られる。
水の表現においては狂気すら感じた。
超オーソドックスなテーマで、「どうするんだこれ」と思いながら眺めるが、真相が分かりはじめて「なるほど」
2人の個性を活かした落ちを想像させてわくわく。
🐶〈終盤〉👢🚢
凸凹コンビ誕生。
(溜めたねぇ)
これを表現できる犬がいるのかぁ、の初体験。
「悪人をぶっ潰せ!」「俺のところに仕事全部よこせ~」しか会った記憶がないので衝撃。
(1番遠いところから理想的な球飛んできたw)
アメリカナイズされた不毛な二項対立軸にうんざりしていた時期なので、余計に心に響いた。
宮崎アニメ『君たちはどう生きるか』を彷彿させる成熟具合。
年長者の仲間入りをしてなお成長し、新しい世界を見せてくれる。
歴史に残るチームやりよる。
わびさびに行かずに物量押しで若々しいし、恐れ入った。
【映画を振り返って】💎🐧
ファンが久しぶりの新作で騒いでいるだけだろ、と思って蓋を開けてみれば驚きの名作。
あまりの出来の良さに笑うしかない。
ドタバタ。
実写だとまんねりで絶望的なジャンル。だけど、コマ撮りアニメの個性を活かしてダイナミック。新しい場面をつくれるので相性がいい。
グルミットが喋らないので、動きの面白さが際立つ。
とくに重力を感じさせる表現は伝わりやすく、同じ素材でも重くなったり、軽くなったり巧みな技術が披露される。
神は細部に宿る。
展開が丁寧で、時間の使い方が上手くてハイクオリティ。
完成度だけじゃなく、ちゃんと熟考してつくられているので、実写で映画製作している人にもいい刺激を与えてくれるだろう。
個人的には、古めかしいコンピューター映像との組み合わせがお気に入り。
実物のモデル縛りでも、モニター内に映るCGは有りなのだろう、丁度いい味変。
ドット絵の温もりが好きな人だとにやにやできるだろう。
🧹奉仕活動。
今回のテーマは、人の生活を手伝うロボット。
犬の活躍もそうだけど、大量に登場するガジェットもそう。
サービス縛りにしてある。
何も言わなくても、座っているだけで、代わりに仕事をしてくれる。
かゆい所にも手が届く気遣いがすごい。
せっせと働いて奉仕してくれる監督と、ソファーでぼ~としてサービスを受けたい視聴者とで、需要と供給が成立している。
不思議な共生関係だ。
純粋。
監督、脚本共にまっさら。
コメディパートもまったく毒気がない。
こんなに汚れのないコンビの作品に触れるのも珍しい。
🎅🏻ノームの扱いが酷い。
日本だと可愛いイメージがあるけど、今回は悪役。
クリスマスホラー『聖夜の惨劇 ニッセやりすぎる』だと襲ってきたし、小柄で無邪気な小父さんが大量に押し寄せるのが定番に。
ノームは大切に扱うと家の手伝いを。ぞんざいに扱うと悪さをする習性があるらしい。
言われてみれば、そんな話だった。
🤝共存共栄。
脚本家の得意分野で、監督の苦手分野。
ワンマンだと完成しない物語であり、他者を受け入れる寛容さが必要に。
ただ、主人公の周りをポンコツだらけにして、
「俺が何とかしてやるよ」
は健在なので、ぎりぎりではあるのだが……。
苦手な部分は仲間に補ってもらえばいいので、総合芸術の醍醐味でもある。
テクノロジーの進歩を恐怖ととらえるか、上手く使いこなすかは人間次第。
元来の楽観主義によって、新しい戦力が加わった、とあっさり受け入れる職人の笑顔が目に浮かぶ。