似太郎

兄とその妹の似太郎のレビュー・感想・評価

兄とその妹(1939年製作の映画)
4.6
【昭和ドリームを掴むまで🌈】

戦前の松竹蒲田調を担った島津保次郎監督作品。昭和初期(太平洋戦争前)の庶民が思い描く理想的な家族像👨‍👩‍👧やジャパニーズ・ドリームなどが丹念に込められた名作。国策映画スレスレだが、そこまで鼻にはつかない作り。

松竹三羽烏の一人、佐分利信主演の小市民映画。正義心の強い熱血商社マン👨‍💼である主人公(佐分利)の妹の桑野通子が芯のしっかりした存在感で魅力的だった。小津映画とはまた違った雰囲気の小ブルらしい日常を穏やかに綴っている。GOING MY WAYってか?😙

今まで撮り方や編集が地味だな〜、と思っていた島津タッチが急激にモダンとなった意味でも画期的な作品。まるでアメリカのフランク・キャプラ作品(『オペラハット』)のようなバタ臭さ。この頃らしい和洋折衷感がイイ意味で効いている映画。今となっては信じ難い社内での「真面目さ」や「正義心」が災いして主人公が隣国の満洲へと左遷される悲運なオチ。✈️

真面目なヤツほど馬鹿を見る、といった日本的なイビツな構造が垣間見れお世辞にもハッピーエンドとは言い難いが、決して暗くもないという作品。脇役の上原謙、笠智衆など小津、清水ファミリーも挙って出演しており戦前の松竹蒲田作品らしい品格のある作風は今にはない叙情性がありまさしく昭和モダーン。👒🍃

冒頭に於ける暗闇の長回し映像や、都市風景の実験的なモンタージュなどがこれまた斬新で小津とは違った意味でハイカラ。太平洋戦争へと突入していく時代の作品にも関わらず「戦争の匂い」を感じない辺りが、妙なアンビバレンスを醸成しているカルト作とも言える。(『鴛鴦歌合戦』なんかもそうでしょ?😅)
似太郎

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