【芯の通ったヒロイン】
有吉佐和子の小説を巨匠木下恵介が映画化した3時間超えの大河ロマン。主演した岡田茉莉子の可憐な美しさが目に焼き付く戦前から戦中、戦後までを生き抜いた母と娘の愛情流転がしっとりしたタッチで綴られていく。
透明感漂うモノクロ映像が品格を与えている。さすがは木下恵介である。『二十四の瞳』ほどではないが、やはり運命の荒波に翻弄される女性の繊細な感情表現が慎ましく静的な流れで進行していく。一貫してクールな語り口なのが良い。
3時間超えという長尺を全く飽きさせないシナリオ構成力と役者の重量感で描破する手腕は黒澤明の『七人の侍』にも近いものがある。有吉佐和子の原作小説は未読だが、苦しい時代を生き抜いた女性のドキュメントとしては実に生硬な出来のヒューマン・ドラマと言える。NHKでやる『虎に翼』みたいな朝ドラが好きな方にも是非オススメしたい逸品。