垂直落下式サミング

コロラドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

コロラド(1948年製作の映画)
3.8
南北戦争の英雄オーウェン大佐(グレン・フォード)は帰郷し判事に任命されるが、悲惨な戦争の現実を目の当たりにしたことで心を病み、優しさと誠実さを失い、抑えられない殺人衝動を抱えた疑心暗鬼の塊となってしまう。今風に言うとPTSDによってひき起こされる悲劇を描いた作品である。
法廷に立ったが最後、無実のものでも絞首刑にされてしまうため、市民は彼を恐れ、彼もますます精神破綻し、その様相が無表情なものになるのにあわせて、映画の色合いも我々が思い描くような快活な西部劇からは遠退いてゆく。首吊り判事の眼は、正義に燃え怒りを宿しているようにもみえるが、いつか恨みを持った人間に後ろから刺されるんじゃないかと、小気な男が復讐に怯えているようにもみえる。
このような男が実際に権力を持っている現実社会には嫌気がさす。品行方正でない人間を愚者だと見下し、出来ない人間を無教養だと蔑み、貧しい人間にむかって努力不足だと吐き捨て、他人の辛さを知ろうともせずに偉そうにのさばっている奴等は全員偽物だ。本当の男はウィリアム・ホールデンのように、立場を鑑みず、救いを求める仲間のもとにやってきて共に戦うのである。