こなつ

SUPER HAPPY FOREVERのこなつのレビュー・感想・評価

SUPER HAPPY FOREVER(2024年製作の映画)
4.0
海辺の町で亡き妻の思い出を辿るひと夏の物語。ちょっと切ないけれど、優しさが心に残る作品だった。

若くして妻を亡くした主人公とその親友との旅先での一日を描いたヒューマンドラマ。架空の海辺の観光地が舞台。失くしてしまったものを探そうとする主人公の姿に、大切な人を失った喪失感に苦しんでいる思いがヒシヒシと伝わってくる。どんなに辛い別れがあっても、永遠に残る幸せな瞬間は心に蘇る。だから希望を捨てずに人は生きていけるのだと感じた。

妻に突然先立たれた佐野は、幼なじみの宮田と久しぶりに海辺のリゾート地を訪れる。そこは5年前佐野が妻の凪と出会い、恋に落ちた場所だった。妻との思い出に固執し自暴自棄になる佐野の姿を見かねて、宮田は友人として助言するものの、ある怪しげなセミナーに傾倒している宮田の言葉は佐野には届かない。5年前に凪が失くした赤い帽子を探しながら、閉店した思い出のレストランや初めて凪に声を掛けた遊覧船を巡る旅。

5年前佐野たちや凪が宿泊したホテルに滞在したが、そのホテルも閉館が決まっていた。ホテルのベトナム人の従業員、アン役のホアン・ヌ・クインは映画初主演ということだが、存在感のある魅力的な演技が光る。彼女が口ずさむロビー・ウィリアムズの「Beyond The Sea」がいいのだ。「海の向こうのどこかで、彼女は私を見守っている」作品の雰囲気にピッタリで、優しく包み込むメロディーが耳に残る。

海の色や遊覧船がつい先日行った熱海と同じだったので、その辺での撮影だったのだろう。ホテルやレストランが閉館に追い込まれ、浮き沈みの激しい海辺の観光地を舞台にしているが、今の熱海は凄い人気でかなりの熱気。もしこの作品を先に観ていたら、私も赤いキャップを探している気分になったかもしれない。
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