”自然死”という名の安楽死が、制度化された世界。
「大事な話がある」と言われた直後に、母を自然死で亡くした池松壮亮が、母のデータからVR世界にAIの母を復活させる。
学習によって徐々に完成度を高めてゆくAI母は、やがて主人公の知らなかった、もう一つの側面を見せてゆく。
平野啓一郎の原作は未読。
亡くなった人間を、その内面までも限りなく忠実にAIで再現できた時、人間は何を知り、どんな変化が起きるのか?というのはとても興味深い哲学的なテーマ。
だが映画は要素が多すぎて、とっ散らかった印象になってしまった。
主人公の犯した過去の犯罪や、あちらとこちらに二分化された格差社会、進化したSNSの闇、と言った社会的イシューが散りばめられているが、正直サブの部分が前に出過ぎてメインプロットのノイズになってしまっている。
やたらと絡んで来る主人公の幼馴染など、ほぼウザキャラになってしまっていたが、あの人いないでも主人公の問題は描けるだろう。
どこまで原作に忠実なのかは分からないが、これは共に人との関わりに問題を抱える、池松壮亮と三吉彩花のドラマを軸とし、田中裕子が演じるAI母が、二人の触媒になる構造を貫くべきだったんじゃないかしら。
直近の近未来SFとしてのリアリティは感じるし、面白いことは面白いが、もっと主人公と母との関係を見せてくれよと思ってしまった。
あとノイズと言えば、三吉彩花のシャワーシーンいる?
あそこは唐突すぎて、ぶっちゃけスケベ心しか感じなかったのだけど。