こういう文学くさい映画は結構すきで、しかも広瀬すずが主演なんだから見ないわけにはいかず、でもあまり入っていないようで、うかうかすると見逃しそうなので、タイミングを見て平日レイトショーで鑑賞。
タイトルの「ゆきてかへらぬ」は、中原中也の詩のにある。詩の副題に「京都」とある。もうあのころには戻れないという感覚か。
日本の近代化というか、西洋化が進む時代。
上からの赤い和傘のショットが印象的に見せる。
泰子が荷物を取りに戻るとき、持っている傘は洋傘だった。泰子の服装も洋服になっていたり。
時代の過渡期、女性もかわってきている。
ファムファタール的な泰子。中原中也と小林秀雄は泰子にほれる。泰子も男を支えにしないとうまく生きていけない。しかしケンカが絶えない日常。
少し「ナミビアの砂漠」のカナのように見えた。
泰子と母のつながりも時折り見せる。母と子を置いて去っていく父親の記憶。泰子は強く生きた。
もっと文壇的な映画だと思ったが、あくまでも泰子の視点で語られる。中原中也と小林秀雄の関係も泰子から見ると大して楽しくもない。
とにかく泰子演じる広瀬すずがよかった。もちろん贔屓目という自覚もあるが、葬儀のシーンからラストに引き込まれて泣けた。
対して、中原中也役の木戸大聖の話し方が、最後まで馴染めなかった。きれいな顔だち、風貌も含めて中原中也的な演出なのだろうと思うが。