抹茶マラカス

半落ちの抹茶マラカスのレビュー・感想・評価

半落ち(2003年製作の映画)
3.5
 横山秀夫原作は非常に映画に向いている。何せ働くおっさんたちが汗まみれで戦う短編が多いからだ。高山薫では、長編すぎて映画にはならない。
 そんななか、彼の大傑作のひとつ「半落ち」の映画化。「64」といい、なんで長編ばっかり映画化されるのか。短編ミステリに映像化の種は残りまくりですよ。
 原作では警察官、検察官、裁判官、記者、弁護士、刑務官と多様な一人称視点で事件を見ていくことで最後に真相が分かるものだが、映画は彼らを越えた第三者視点でみることになってしまい、正直言って謎解きのカタルシスは皆無に近くなってしまう。挙句法廷でのやりとりがラストになっているので、梶自身の心の動きも少なめ。それぞれの登場人物が少しずつ道を外れながら、でも必死に正しいことをしようとする。アルツハイマーによる介護疲れや骨髄移植といった社会派の皮を被った人の正しさと絆を描く物語だけに、視点の再構成などをしてもよかったのではないだろうか。
 それぞれの人物で正しさと直面する問題が変わるのに、2日間何をしてたのか問題と命と魂問題など、法廷になるといよいよ問題の本質がぼやけて見えてしまう。あと、記事と日記のW朗読は流石に冗長。