ヴンダーマサミツ

ナイトビッチのヴンダーマサミツのネタバレレビュー・内容・結末

ナイトビッチ(2024年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい映画でした。

主人公は大学院まで進学した芸術家ですが、今では結婚して育児に追われる毎日。
本当は芸術活動に勤しみたいが、それもままならず。
育児という生物として本能的な面と向き合う中で、主人公は犬のように獣化していきます。
物語の中盤は、主人公がまるで犬になったかのような描写が続き、妄想的な表現になっています。
まさにその表現は、自然や地球、宇宙と一体になるようでした。
母親という存在は宇宙そのものであり、何もかもを超越した主人公は、芸術家としてのキャリアにその母親としての経験が加わり、最終的に展覧会で大成功を収めたのでした。
序盤のスーパーマーケットのシーンでは主人公自体が、母親という立場に対して否定的で、出産前の賢かった頃に戻りたい、と発言する(喉元まで出かかっただけかもしれない)シーンもありましたが、ラストでは主人公の心象の変化も見られます。

劇中で、主人公が犬化し、母親の本能的な面を描いています。
近所の犬たちが主人公の家に集まって来ますが、その犬たちはいわば未知なる宇宙へのガイド役のような役割?かなと思いました。
終盤、子供と公園で遊んでいた時に、「僕はワンワン」という息子に対して、「違うでしょ?」と言い放ち、主人公は心も体も現世に戻ってきたわけですが、それを見守る三匹の犬は、案内役を終え、立ち去っていくようでした。


それでも時間は短い。
その短い時間を主人公一家3人、いや4人は月明かりの下、洞窟で一つの生物として暮らしていくのでした。

いろいろな意見がある本作だとは思いますが、子であり、子供の親でもある私個人としては、母親だけを描いた作品というより、人生そのものを肯定的に捉えた作品であると感じました。
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