このレビューはネタバレを含みます
エマニュエルは仕事で、香港にある高級ホテルに向かうことに。飛行機内で妖艶に男に目配せし、早くも官能シーンが描かれる。現実なのか、彼女の願望か欲望による妄想なのか、分からないが。前後の脈絡がなく、あまりに唐突なので驚き面喰ってしまった。オーナーからの査察依頼を受け、滞在しながら裏側を調べ始める。サービスや設備などは、ほぼ完璧な一流のホテルだと思われた。しばらく滞在するうちに、ホテル関係者や社長のマーゴを探る。問題はないと報告するのだが、さらに調査するよう命じられる。怪しげな宿泊客たちとの交流は、彼女を禁断の快楽へと誘う。娼婦らしき謎の美しい女性と出会い、快感を覚え惹かれていく。人種や性別、立場を超えて、ただ性欲のままに突き進むヒロイン。「ノエミ・メルランさん」 は、とても美しくセクシーで魅力的だった。潔く大胆な脱ぎっぷりで、体を張った演技は素晴らしかった。だが他に良いところがなく、肝心の内容が薄っぺらくつまらない。エマニュエルは優秀な調査員という、自立した働く女性なので。何も抑圧されていないし、誰にも依存していないし弱くもない。最初から自由だし、性の歓びも年齢的、経験的に知っているはず。今更自分を開放する必要もなく、共感出来ないのが致命的に痛い。さらに、「神秘的な常連客 シノハラ」 のことが気になり執着する。確かに神出鬼没で、存在自体が謎に包まれているようで怪しい。次第にエマニュエルは、どこまでも彼を探して追っていくように。ついに彼を求めてホテルを飛び出し、いかがわしい夜の街へ。見知らぬ土地を軽装で彷徨う危機感の無さが、危なっかしくて。自ら危険に飛び込むヘタな勇気に、呆れつつもハラハラさせた。そして、自分の欲望を見失った彼女が追い求める、真の快感とは。これが望んだ形なのかと、最後まで理解が出来ず追い付けない。性に目覚めたわけでもなく、最初から開放的なので変化がない。あれで興奮するのか、何がしたいのか分からず、残念だった。豪華なホテルの非日常的な雰囲気は味わえたが、楽しめなかった。