Bobsan

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声のBobsanのレビュー・感想・評価

5.0
リドリー・スコット監督の視点は奴隷や剣闘士、皇帝側の人間達よりもコロセウムに集う民衆にあると感じました。
人間同士が本当に闘って剣で斬られ槍や弓で
体を貫かれて血を流し、首を刎ねられて殺される"見せもの"に何の罪悪感も持たずに歓声を送り熱狂する民衆の姿には、例えばネットで炎上した人を攻撃対象に定め誹謗中傷する不特定多数の人々であったり、先のアメリカ大統領選やどこぞの知事を巡る一連の選挙騒動などに血をたぎらせる群衆、マスコミ、有識者と呼ばれる人々の姿がダブって見えて仕方がありませんでした。
また最後、マクリヌスを倒した後言葉を投げかけるルシアスに賛同し、歓声を上げる双方の軍隊の姿も単に強いものになびいて心変わりしているだけに見えました。
211〜212年の人々と2024年の人々をダブらせて、人間というのは今も昔も何ひとつ成長しない愚かな生き物であると感じさせるリドリー・スコット監督の冷徹で突き放した視点に唸る快作でした。
Bobsan

Bobsan