紅梅シュプレヒコール

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声の紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

4.0
敗戦によって捕虜となったヌミディアの戦士〈ハンノ〉は、妻を殺した仇敵〈アカシウス〉に復讐するため剣闘士になることを決意する。一方で〈アカシウス〉は、ローマ帝国を双子皇帝〈ゲダ〉と〈カラカラ〉の圧政から救うべく、謀反を計画していた。


巨匠リドリー・スコット監督の代表作のひとつ『グラディエーター』に続編が誕生。
基本的に続編は監督しないスタンスのリドリー・スコットが、自らメガホンを取っている訳ですから観ないわけにはいきません。

主人公〈ハンノ〉を演じるのは、『アフター・サン』の父親役で注目を浴びたポール・メスカル。
カリスマ性はないものの、彼だからこそ〈ハンノ〉の哀感あるキャラクターを上手く表現できていたように思えます。

もちろん、ペドロ・パスカルとデンゼル・ワシントンの演技もさすが。
安心感のある演技力で、作品の重厚な雰囲気をしっかりと支えていました。

そして、今作の見所は何と言っても迫力ある映像。
VFX技術が発達したことで、リドリー・スコットが闘技場でやりたかったであろうことを実現。
実際に行われていたという闘技場内での海戦や様々な動物との対戦など前作とは異なった剣闘士の姿を堪能できます。(動物映画と呼んでも過言ではない)

しかし、人物が織りなすドラマに深みがないのは惜しい。
〈ハンノ〉の剣闘士ライフを主軸で展開する一方、ローマ帝国を巡って様々な思惑が交錯していくのですが、どの視点も心情の芯までは触れず表面(=行動)しか描かれない。
そのせいでキャラクターの信念に厚みを感じにくく、ドラマがやや淡白になってしまっていました。

また、敵が誰なのか(=主人公のゴール)が終盤に至るまで判然としないので、何をクライマックスに設定して観たらいいのか分からず、盛り上がりを感じにくいのも難点。
個人的に、「困難を乗り越えて、遂にこの時が来たか」という昂揚感は欲しかったところです。

ただ、映像は間違いなく見応えありますし、脚本も強く批判するほど悪い訳ではないので、未鑑賞の方は安心して観てください。