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正体のmaroのレビュー・感想・評価

正体(2024年製作の映画)
4.0
2024年日本公開映画で面白かった順位:60/134
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

※以下、敬称略。
原作小説は未読だけど、2022年に放送されたWOWOWのドラマ版は鑑賞。
今回の映画はドラマ版と大まかな流れは同じだけど、構成やキャラ設定などはけっこう異なる。
ドラマ版がすごく面白かったからハードル上がってたけど、映画は映画でとても面白かった。

直前にドラマ版を観たこともあって、感想はそれとの比較が多くなってしまうけれど、今回の映画の一番大きなポイントは鏑木(横浜流星/ドラマ版は亀梨和也)と関わった人全員が「救われた」ことかなと思った。
殺人事件の容疑者として逮捕された鏑木は、「俺はやってない」と言い張り、真実を求めて事件現場にいた唯一の生存者に会いに行く。
とはいえ、追われる身ではあるので日本各地を転々としながら、そこで出会った人々との交流も後に大きな意味を持つことになるんだけど。

ドラマ版は全4話構成で、鏑木が逃げた場所1つにつき1話みたいな形なんだけど、鏑木はそこで困っている人を助ける救世主のような面もあった。
それは彼の誠実な性格ゆえなんだけど、人徳って言うのかな、それが最後に鏑木に希望をもたらすことになる。
今回の映画は尺が限られていることもあって、ひとつひとつのエピソードに割く時間はドラマ版よりも短い。
鏑木による人助けの要素が減り、水産工場(ドラマ版でいうパン工場)のシーンはほとんどなかった。
ただ、映画版でも鏑木の誠実な人柄という本質は変わらず、彼の真面目でまっすぐな生き方に触発されたのか、彼と関わった人々全員に大きな心境変化が訪れていたのが大きな違いかも。
沙耶香(吉岡里帆/ドラマ版は貫地谷しほり)はより鏑木に寄り添い、彼の未来を生きる権利を守り、和也(森本慎太郎/ドラマ版は市原隼人)は新しい道を進むことを決意し、舞(山田杏奈/ドラマ版は堀田真由)は自分の生き方を見つめ直すきっかけとなった。
ドラマ版のように鏑木に助けられた恩を返すだけでなく、それぞれ自分の人生をよりよい方向へ変えていこうとしていたのだ。

中でも最も大きな違いは、鏑木を追う刑事の又貫(山田孝之/ドラマ版は音尾琢真)だ。
ドラマ版では鏑木が犯人だということも1ミリも疑わず、彼を捕まえることだけに執念を燃やす人物だったけど、映画版は大きく異なる。
今回は新しく又貫の上司の川田(松重豊)も出てきて、ドラマ版で僕が又貫に感じた苛立ちを向ける矛先がどちらかと言えばその川田に替わった印象を受けた。
じゃあ又貫はどういう立ち位置だったのかと言うと、当初は鏑木を捕まえることに躍起になっていたけど、次第にそのことに疑問を持ち始める設定になっていたのだ。
ラストでの又貫の行動には驚かされたけど、正しいと思うことを正しいと言えた彼もまた、鏑木によって「救われた」と思う。

そんなわけで、ドラマ版も面白かったけど、映画版もすごく面白かった。
死刑判決が出ていた鏑木のあきらめずに真実を追い求める姿と、そんな彼と関わることで人生が変わっていく人たちの感動のサスペンス、いや、もうこれはヒューマンドラマと言った方がいいかも。
みんなが出会う鏑木は姿は違えども、中身はどれも同じ。
誠実でまっすぐで、それこそが彼の正体だと思った。
観終わった後、心が晴れやかになる映画なのでオススメ。
ちなみに、ドラマ版で裁判長役を演じた信太昌之が、映画版では検察役なのも見どころ(笑)
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