近未来というわりにSFとしてどうも飛躍していないし、10代の青春映画としても目新しさがなく、期待していたより魅力的ではなかったが、栗原颯人の眼差しには異様に惹きつけられた。顔の造形はどことなく菅田将暉に近いが、時折り金属バットの友保を彷彿とさせる不気味なパワーもあり、ずっと見ていたくなる俳優だと感じた。閉鎖的すぎる社会のなかで溢れる情熱をテクノ音楽や、イタズラ、夜更かしにぶつける清々しさと、それを上回る救いようのない虚しさを感じて胸が痛くなった。
しかし、何度も言及される「権力者」が甚だ曖昧というか漫画的で、ここがめちゃくちゃ浮いていたのが残念だった。どうせなら顔も見せない謎にしておけばよかったんじゃないかと薄らおもう。実際、総理大臣や政治家が本当に日本を動かしているとはおもえないし、本当の権力者は、もっとややこしい存在であるはずである。安倍晋三の事件があり、例の宗教問題が露呈したように、何がどうなっているのかさっぱりわからないのが現実だろう。
色々書いてしまったが、音楽、カメラと被写体との切ない距離感、ランドマークに頼らず都会を切り取るという強い意思が伝わる構図はすごいとおもうし、政府による管理社会にNOを突きつける姿勢も勇気ある行動やし、たくましいとおもうので、めっちゃ評価したい。
最後に、車を倒立させる演出は、シンプルに斬新で、芸術的で、うっとりした。おもえば舞台が都会の街中でありながらも映画のなかで車はほとんど映らなかったようにおもう。環境音としても走行音は感じられなかった。車嫌いなのか? 些事として無視できないこだわりを感じて気持ち良かった。とはいえ、どないして倒立させたのか? そこが悪い意味でモヤっとするので省略するべきじゃなかったとおもう。