HidekiIshimoto

午後の遺言状のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

午後の遺言状(1995年製作の映画)
3.5
日本アカデミー賞主要三部門受賞とはいえ同じ新藤×音羽コンビの『裸の島』『縮図』『鬼婆』などの傑作にはもちろん及ばない。単体では及ばないけどあれら傑作群なしには生まれない映画だし、このソウルメイトコンビ以外の誰にも撮れない映画なのだから受賞は当然だったと思う。これを観る前に新藤監督の『愛妻記』という本を読んだ。本作の舞台裏が事細かに綴られたタイトル通りのエッセイで、そもそも撮る理由が音羽さん余命一年ということからも二人の愛がどんなものだったかを垣間みることができる。撮影時の音羽さんはもはや瀕死、それでもどちらも妥協しようとしないプロとしての生き様。その互いの生き様が二人の愛とぴったり重なっているという凄まじさ。私生活でも「音羽さん」「せんせい」と呼びあっていた二人。杉村春子の遺作でもある本作で二人の敬愛する「せんせい」に寄り添われながら長い芸の幕を閉じた音羽さんは幸せだったと思う。