テレビシリーズを追っているわけではないが、出色の出来の劇場版だと思う。
お人好しから始まるグルメ旅は劇場版らしくいささか波乱に満ち、大仰に展開していく。そして、落ち着いたところで『タンポポ』への憧憬を滲ませる魂の物語になだれ込み、根底にあるメッセージをより高次元のところまで昇華させる。実に器用な脚本でエンタメ映画のお手本のよう。
そして大前提に食事と食材、ひいては生命に対する感謝、有り難みがあり、それを説教くさくせずに実直に見せるのもお見事。
あくまでリアリティを壊さず、最後は日常に収束していく。
低重心のカメラに朴訥とした映像のタッチがカウリスマキを思わせる。