とても成熟した贅沢な映画だと思った。これほど自分の死にじっくり向き合う思考力と、最期の演出を計画する時間と金銭的余裕と相談できる交友関係がある上で、実行を阻害するしがらみは(少なくとも本人の中には)ない、という全ての条件がまずとてつもなく贅沢に感じる。その過程をまるでアートのように彩る美しいロケーションと映像。そのリュクスな空間で鮮やかな色の衣装を身に纏うティルダ様は、俗世を削ぎ落としたファッショニスタ僧侶のように見える。「少しの威厳を持って美しく死にたい」きっと多くの人がそう望んでいる。自分をしっかり制御できるうちに鳥が飛び立つように逝きたい。そのマーサの願望自体は何も不思議じゃないけど、友人を巻き込むくだりはリスクを考えるとちょっと強引に感じた。計画を聞いたイングリッドが自ら寄り添いたいと望んだ方が自然じゃないかな?どちらにしてもまだまだサンプルの少ない《自立しきったシニア女性同士の友情物語》という点でも満足。主演二人の演技力と存在感で成り立っているので舞台的な見応えもあり、かなりシンプルな筋書きだけど最後まで緊張感があり目が離せなかった。