Sohey

ブルータリストのSoheyのレビュー・感想・評価

ブルータリスト(2024年製作の映画)
3.4
ビスタビジョンという現代では見慣れない画面サイズ、光、構図。ラースローの建築へのこだわりのように格調美の映画だった。

オープニングの自由の女神が見えるシーンに興奮した第1部のその後は静かな展開が続くが、妻と姪がアメリカにやって来る第2部冒頭からどっと物語が動き出す。

「狂気にのみこまれないで」という妻のセリフはアメリカの資本主義に囚われず自身のイデオロギーを貫こうとするラースローの支えになる一方、ハリソンの「迫害を生むのになぜ標的になりやすくしている?」はユダヤ人の悲しい運命を物語る。と同時に、資本主義を牛耳るアメリカの思い違いも表していると感じた。コミュニティセンターのデザインにはそんな資本主義に反抗を示そうとしたラースローの生きた証が刻まれている。でも建築家としてかなりというか契約違反級のエゴだと思うが。

個人的に『リアル・ペイン』はOKだったのだが、やはりユダヤ人の受難を描こうとする映画に対してイマイチ前向きになれず、鑑賞中もずっと「う~ん」と唸っていた。
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