ワシ

レベル・リッジのワシのネタバレレビュー・内容・結末

レベル・リッジ(2024年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

【あらすじ】
従兄弟の保釈金を支払うため田舎町を訪れた元海兵隊員のテリーは、保釈のために持っていた現金を、地元警察の不当な言いがかりによって押収されてしまう。
このことをキッカケに警察との確執を生んだテリーは、ことごとく警察と対立した挙げ句、従兄弟を助けることは叶わず、自身も街を追い出されてしまう。
しかし腐敗した警察の実態を暴くため、裁判所職員のサマーと共に、不正の証拠を集め始めるが…。

【雑感】
警察による不当な扱いにブチ切れる元兵士の話…というと、スタローンの『ランボー』を思い浮かべてしまう。
そういう風に考えようとしなくても、自動的に頭に浮かんじゃうんだよなぁ。
若い方々だとそんなことは無いんだろけど、ワシはスタローンの映画を観て育った世代だし、そんなイメージに囚われてしまうのはどうしようもないと言うしかない。

そんな訳でこの作品は、作り手側が全く意識してなかったとしても、『ランボー』に何らかのインスパイアされた作品としか思えなくなってしまった。
ワシの勝手な決めつけで申し訳ないが、この作品については『ランボー』との比較で話をしていきたい。

先ほど『ランボー』にインスパイアされた…なんて言ったが、本作は『ランボー』とは真逆のことをやっている。
その姿勢は細部まで徹底していて、まるで「『ランボー』みたいだなんて言わせないぞ!」っていう、作り手の強い意思みたいなものすら感じさせる。

元兵士と警察の対立構造は同じだけど、『ランボー』の主人公は数々の功績を残した優秀なベトナム帰還兵で、ゲリラ戦を仕掛けて次々と敵を討ち倒すが、PTSDに苦しんでる。
ところが本作の主人公は、武器を使用しない対人戦闘のスペシャリストながら、実戦経験の無い、知的かつ理性的な黒人男性。
無闇やたらと戦ったりはしないが、必要とあれば体術で相手をなぎ倒し、絶対に人は殺さない。
もうね、主人公の設定だけみても、同じ元軍人ながら正反対の印象のキャラクター。

また物語の展開も真逆で、警察の不当な扱いにブチ切れた後は、街の壊滅までイケイケどんどんの脳筋展開だった『ランボー』とは違い、本作は現実的で緻密で理詰めだ。
本作の主人公も不当な仕打ちを受けるが、それらは法律の運用的には問題ないとされる範囲だし、裁判で争っても勝ち目は薄い。
警察がやってることが良くないのは明らかだけど、法を犯してるとまでは言えず、警察を「悪」と言い切るのが難しい訳だ。

そんなもどかしさが、主人公の怒りへの共感に繋がっていく。
ところが司法を巻き込んだ警察の不正行為の存在が明らかになり、形勢は主人公側へ有利に傾いていくことになる。

中盤からの新たな展開で、作り手は「警察や司法の不正の話だから『ランボー』なんか関係ないよ!」と言いたかったんだろうか。
作中でアル・パチーノの『セルピコ』の名前を出しちゃってる。
わざわざ言わなくてもいいのにねぇ…笑

ここからは、観終わった後の率直な感想。
法的な問題も含めたリアル志向な作りは、社会問題的な部分に真実味を与え、それが実際に起こり得るものたと強く印象付ける。
また主人公を演じたアーロン・ピエールの抑制の効いた渋い演技は、独特の迫力や凄みがあり、作中の登場人物の中で図抜けた存在感を放っている。

しかし保釈金の手続きの話に始まり、金を取り戻す手続き、警察が不正に金を得る過程など、込み入った話が多くなってしまい、観てると非常にややこしい話に感じてしまう。
さらに現実に起こり得る表現に終始するので、映画的な面白さという意味では突き抜けたものが無く、強いカタルシスは得にくい内容になってる。
また、そうした突出した魅力が無いという指摘は、Netflix作品特有のものだとする意見もあるらしい。

元海兵隊員が主人公ってことで激しいアクションとか期待しがちだけど、この作品はアクションを売りにした作品じゃない。
むしろ困難を乗り越えて警察の不正を暴く本格サスペンスという風に見ないと、思ってたのと違う!なんて印象を受けてしまうかも。

まさにワシは「思ってたのと違う!」と感じたし、よく出来てるけどスカッとしない印象だった。
今回はこんな感じでした。

【後書き】
あの『マイアミ・バイス』のドン・ジョンソンも、すっかりお爺ちゃんだなぁ~。
それに腐敗した警察署長の役柄かぁ…。
時代を感じちゃうね。

【余談】
ちょっと気になって、女性警官を演じてた方を調べたらザン・ジェって女優さんだった。
試しに画像検索してみたら、ザンギエフの画像出てきて吹いたw
ワシ

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