個人的には2000年代最高傑作としているがやはり映画とは見るたびに印象の変わるものであって、もう何回か見ていると冒頭のダンスシーンが面白くてしょうがない。あの音楽とやかましいコラージュ、その後の白飛びしたナオミ・ワッツでリンチの世界に入るんだという気がする。
初見ではその不条理さや不可解さにその後の人生を揺さぶられるほど興奮したが、今では不条理というよりとても素直でストレートな表現に見えるし引用やメタファーも気付く部分が違ってきた。最も引き合いに出される『サンセット大通り』よりも『スカーレット・ストリート』とか『サリヴァンの旅』みたいな、人間が精神的に一気に転落していく時の悲哀が迫ってくる。
なんというか当初感じていた独特の世界観で面白いという感想よりも、夢を見て出てきた人が現実とのギャップで苦しむという部分にかなり重い感情を抱くようになった。
全然リアルではないのだが、撮影現場やオーディションもかなりリアルな悪夢のように感じる。打ち合わせや撮影前日の夜など本当に嫌な夢は見る。
もうむしろ世界はこんなだったらいいのにと思うことはある。