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ファーストキス 1ST KISSのtkのネタバレレビュー・内容・結末

ファーストキス 1ST KISS(2025年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

硯駈、おもしれえ男だ。
学者肌の喋り方から、丁寧な生き方をしているんだろうと伝わってくるし、曲げられない信念を持った好青年ときた。
カンナでなくとも、好きになっちゃう魅力充分。
松村北斗、ますますもってイイ役者だな。
恋愛もので、運命を変えようという話からして、湿っぽさが強かったらどうしようと身構えていたが...。
意外にもクスッとなるところが多く、映像も鮮度が高くて、観ているだけで楽しい画面。
これだけで勝利と言っていい素晴らしさ。
カンナ役の松さんも、我々のような庶民ではない筈なのに、ちゃんと“こっち側”の情けなさや、やるせなさを体現されていて、すんなりと彼女の視点で観られる巧さ。
主人公が運命を変えようとする一連。
タイムスリップをしながらタイムリープ的でもあり、現在の時間も経過していくという、やり直し系の新規軸を試みていて面白い。
途中で何度も「やめてください」を言わせるリテイクは笑ってしまった。
かわいすぎか。
主演の御両人しか意識になかったけど、唐突に吉岡里帆が出てきて大歓喜。
現代パートで、チクチクとたられば話をされたら、それもアリなのかなと思っちゃうよね。
だけど予想以上にカンナとはキッパリ正反対な趣で笑っちゃうし、親父さんの面倒くささも相まって、どうやら幸せなルートでもなさそう。
出逢うべくして出逢ったふたり。
そんな夫婦になった男女の日常の一コマの解像度が高く、ちょっとした変化を描き分けていく。
お互いにぶつかり合えるうちはいいけど、一つ屋根の下、ふたりが孤独にすれ違っていってしまう過程は、切なくも多くの人に心当たりがあるのだろう。
そういった場面が「ちょっと思い出しただけ」を思い出させる、ほろ苦さ。
別れた彼女への想いを、未練たっぷりに唄い上げたミスチルの「渇いたkiss」みたいな感情が込み上げてくる。
君といるのは懲り懲りだと、Surrenderしてしまうような気持ちも。
思い出して疼く、瘡蓋の下のピンクの古傷も。
好きだったという幸せのカテゴリー。
そんなグラデーションの一つかもしれない。
優しい言葉が沁みるじゃあないか。
ふたりが出逢ったあの日から、駈くんが密かに胸にしまっていた覚悟。
「覚悟した者」は「幸福」であるッ!
とある神父は言っていたけど、来るべきその日に向かって生きてゆく彼の孤独な約束、強い意志にグッとくる。
数々のタイムリープの名作たちは、事象を変えようとすることの虚しさを教えてくれる物語が多い。
そんな中でやはり今作も、駈の死は変えられずとも、そこに至るまでの過程こそが大事であって、それは変えられるという視点を観せてくれて、非常にいい。
そんな人生讃歌が暖かく、明るい気持ちになる。
よし、今日の晩ご飯は餃子にしよう!!
着払いではないサプライズが届く改変も、彼の優しさが垣間見えて好きだった。
思い出した時、ふと観たくなる映画がまたふえちゃったな。
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