ぶみ

ファーストキス 1ST KISSのぶみのレビュー・感想・評価

ファーストキス 1ST KISS(2025年製作の映画)
4.0
2000本目となる作品はこちら。

私はその日、15年前の夫に恋をした。

塚原あゆ子監督、松たか子、松村北斗主演によるドラマ。
事故で夫を亡くした主人公が、タイムトラベルの術を知り、過去の夫と出会ったことをキッカケに事故死から救おうとする姿を描く。
主人公となる硯カンナを松、夫で大学の研究員である駈を松村、カンナの同僚である世木杏里を森七菜、大学の古生物学教授の天馬市郎をリリー・フランキー、天馬の娘である里津を吉岡里帆が演じているほか、竹原ピストル、YOU、神野三鈴等が登場。
物語は、冒頭駈らしきサラリーマンが駅で列車事故に遭うという衝撃的なシーンでスタートするため、いきなり度肝を抜かれることに。
結果、駈は亡くなってしまっているのだが、ふとしたことからカンナが駈と出会う直前にタイムトラベルすることができるようになり、駈の死を止めようとするカンナの姿が中心となるのだが、その様子は、まさに奮闘そのもの。
その奮闘シーンが中心となるだけではなく、結婚して15年、不仲となって完全に冷め切った夫婦生活を送り、離婚寸前までいった二人の最近の様子がしっかりと描かれているため、死だけに限らず、その二人が過去を変えることによってどのように変化していったのかも、楽しみだったところ。
何より、若き頃の駈を演じた松村の40代となった現在での姿には若干の違和感があった反面、特殊メイクなのか、CGを駆使したのかわからないが、実年齢で47歳となる松が30歳手前のカンナを演じていたのは驚きであり、髪型といい、肌の質感といい、年代が程遠くない私としては、松自身の当時を思い出させてくれて懐かしさ満点。
また、登場シーンは少ないものの、餃子を届ける宅配便の宅配員を、先日観た岸善幸監督『サンセット・サンライズ』でも好演していた竹原ピストルが演じており、良い味を出していたのに加え、古書店の店主を鈴木慶一が演じていたのは見逃せないポイント。
更には、携帯電話でのメッセージを表示するシーンにおいて、最初は折り畳み式、次にはスライド式のガラケー、最後はスマホとしっかり機種の進化で時代の流れを伝えていたのは、些細なことながらしっかりとした作り込みを感じたところであり、好感度高し。
クルマ好きの視点からすると、カンナの愛車がジープのラングラーであり、それが似合っていたことはもとより、ナンバーが「2040」であったため、ずっとそこに何か意味があるのか考えていたのだが、これは勝手な解釈ながら、公開年である今年の2025に15を足した数字であることに気づいてからは、15年後である2040年にあなたは妻(もしくは夫)とどういう関係でいたいのか、そもそも生きているのかどうかを問いかけられているような気がして、一人考えてしまった次第。
以前観た塚原監督作品の『ラストマイル』が、面白かったものの映像に加え物語の解像度がクッキリし過ぎてテレビドラマクオリティから一歩も脱していなかったのに対し、本作品では、コメディ感を持たせたうえで、タイムトラベルものの良さを描きつつ、全てを台詞で説明することなく、映画らしい奥行きを持たせていたとともに、リリー・フランキーや森に吉岡と、人気キャストを揃えておきながら今ひとつ物語への絡みが少なかったのが勿体なく感じたものの、もはや空気のように当たり前に存在する妻のありがたさ、尊さ、そしてあの頃のトキメキを思い出させてくれる良作。

ごめんね、今からあなたと浮気してくる。
ぶみ

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