ミシンそば

ミッシング・チャイルド・ビデオテープのミシンそばのレビュー・感想・評価

3.5
直接的なスケア描写は、恐らく1~2ヵ所くらい。
それでもVHS動画の絶妙な粗さが魅せる雰囲気の絶妙な嫌さと、神出鬼没な廃墟の中に自分もいるように錯覚させられる没入感。
それらがとても息苦しく、ホラーとして非常に良質だった。

群馬の山中で遭難した子どもを助けたボランティアの主人公の青年 敬太に、実家から送られてきたビデオテープ――弟 日向が失踪するその瞬間を映したビデオテープが送られてきたことで、同居人の司や敬太を取材したい記者 美琴らを巻き込み、過去と日向が失踪した山との因縁に向き合わざるを得なくなる。

真っ正面から気味の悪さを押し出した、ジャンプスケアにほぼ頼らないド直球Jホラーだと思う。
全て(主人公以前にも似たような事件は起きていた)の元凶の山の、標的を引き寄せる吸引力と獰猛さはとても恐ろしいが、どこか等価交換を要求しているような、「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドにありそうな性質も窺え、警察機関も含めた周辺地域住民の黙認・相互利用っぷりなどからも「村ホラー」的属性も感じ取れる。

また、同居人の司は霊感があり、「見えている」のだが、徹頭徹尾彼が見えてる世界、その視点にはシフトしない。
「そこに確実にいるけどほとんど見えない」、その気味の悪さを味わえる点でこの映画は極めて良質であると言っていい。
ラストから示される、後味の悪さも含めて、Jホラーが久々に持ち味を活かした。