【Omnes Filmsプレゼンツのベネズエラ映画】
「私たちのミッションは、現代の映画の空白を埋めることです」と宣言するアメリカ新鋭の映画集団Omnes Filmsの2024年はカンヌ監督週間に2本、ヴェネツィア国際映画祭での受賞と躍進の年であった。その中で、ベネズエラ映画を一本発表している。それが『Los capítulos perdidos』である。やっていることは『Topology of Sirens』と同じ感じではあるのだが、Omnes Filmsのショットが好きな人にとっては刺さるものがあった。
ベネズエラのカラカスに戻ってきた女性エナが記憶を失いかけているおばあちゃんと、ある本を探している父親との間と触れる中で記憶と記録を反復横跳びしていく様を描く。この手の作品のトレンドとしてGoogle Mapsやヴァーチャル空間を用いた思索の外部化を図る演出技法があるのだが、本作はストレートに空間の彷徨いを通じて、心の中にある浮遊感を捉えようとしている。そのため、中盤からセリフがなくなっていき、視覚情報を通じて我々に語り掛けてくるのだ。
Omnes Filmsが早くも『Topology of Sirens』を再生産しているような作品制作に不安がつきまとうも、どの場面切り取っても様になる画は流石に圧倒されるものがあった。