80年代漂流するアメリカを体現したようなストーキング女性放浪記。
特集"ベットゴードン エンプティニューヨーク"にて鑑賞、短編が良かったのでこちらも見てみた。
まず本作はベットゴードン監督の初長編になっており、"エニバディズウーマン"と同じくポルノ映画館"ヴァラエティ"で働く女性の話だ。
長編一作目にしてベットゴードンがやっと物語を語り始めたかと思うが、正直そういうこともなくポルノ映画館でもぎりをしている女性に焦点を定めただけとも言える。だがそういった視点で描くことはバーバラローデン"WANDA"然りシャンタルアケルマン作品然り女性インディペンデント映画では大事なことなのではないかとも思う。
ヒッチコック"めまい"に着想を得たらしいが、まあ確かに立場が逆転し女性が男性をストーキングするストーリーラインではある。だがあくまでも自由な女性の放浪する様をまざまざ見せつけてくる作品としてかなり傑作であるなと随所で感じる、スコセッシ"タクシードライバー"のように女性がニューヨークの下町をふらふら練り歩く、もうそれだけで私はこの作品を気に入ってしまうのだ。
間違いないと思うが絶対ケリーライカートはベットゴードンが好きだと思う、"リバーオブグラス"も"ウェンディ&ルーシー"も彼女の香りがチラついて仕方ない。はっきり言って何が起こって何かがなされるわけではない、非生産的な映画とも言えるが、物語の主人公にこれほど共感できるのも珍しいリアリズムを形成した作品であると思う。やっぱりベットゴードン監督何かがある、説明できないインディペンデントの魅力が。