ツクヨミ

映画を愛する君へのツクヨミのレビュー・感想・評価

映画を愛する君へ(2024年製作の映画)
4.5
サンプリングとインタビュー.自身の記憶が紡ぐアルノーデプレシャンの映画史探究。
いかにもわかりやすいタイトルとポスターで"ニューシネマパラダイス"を感じて軽々しく見に行ってみた。
まず本作はアルノーデプレシャン監督自身の経験によるノスタルジー映画という側面は一部分でしかなく、あくまでもサンプリングや語りによる映画史研究ドキュメンタリーというべきか。実は一筋縄ではいかない作品でいろいろとたまげた。
かの"ニューシネマパラダイス"のラストのサンプリングやデミアンチャゼル"バビロン"のラストサンプリングを思い出すサンプリング量、もはや映画史講義でもやりたいのかという仕上がりにおったまげ、わりとトルナトーレ"モリコーネ映画が恋した音楽家"のような雰囲気すら醸し出すめちゃくちゃドキュメンタリーでしかない作品だ。
でも"映画"という現象に対する愛はやはり深く、映画の始まりから一般人に対して映画質問するとか多様な視点で映画を語るかなりマニアックな思想すら見えてくる。思想的な部分はもはやゴダール"中国女"や"女と男のいる鋪道"の哲学語りパートを思い出す仕上がりで、なんかよくわからないけど一応ちゃんと聞いてみるとハッとさせられる発言がところどころにあって感心した次第。
そしてちょいちょい挟まるデプレシャン監督本人の記憶であろうエモ劇映画パートが素晴らしくノスタルジック、あの時のあの映画として出てくる"ひなぎく"や"白い恐怖"の扱われ方が素晴らしくて泣けてくる。自らの人生を彩ってくれた作品の思い出は本当に美しい、あの輝きを秘めた照明光るビジュアルはやはりスピルバーグ"フェイブルマンズ"のオープニングと一緒に語らずにはいられない。
結果的にいろいろと記憶やら思想やらがぐちゃぐちゃに押し込まれた珍品と言えなくもないが、この情報量と映画愛で本当に多幸な映画体験だった。てか単純にあのクラシック映画たちがたくさん劇場で見られて幸せなのもあり、サンプリング過多作品としても豪華すぎる逸品だなぁ。
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