晴海通り

お引越し 4Kリマスター版の晴海通りのレビュー・感想・評価

お引越し 4Kリマスター版(1993年製作の映画)
4.0
トイレに立て籠もるレンコの姿に涙が出た。致命的に諍う両親の間で、子供はどうしようもなく孤独で無力である。親も少しはそれを分かってはいるのだろうが、お互いへの嫌悪・憎悪で見えなくなっている。全身トゲと化した両親の間で、傷つくのはやはり柔らかい子供の心なのだ。

幸い、私はどの立場にもなったことがないのだけど、「誰も守ってあげられなくてごめんね」とレンコに謝りたくなった。というかそれくらい幼き日の田畑智子がよかった。

あと、クラスメイトの彼がどうも見覚えあると思ったら茂山逸平さんですね(笑)

どの立場にもなったことがないと書いたが、ダメになった夫婦の絶対的戻れなさ(特に女側の拒絶)は知っている。それは、残念ながら子供には分からないだろう。水をかぶりながら火柱を抱えるような大人の矛盾や苦しさを知らないのが、子供の幸せとも言える。母に向かって「大人になるからね」と叫ぶ彼女の、近いうちにいずれ失われる幼さ。

デジタルリマスターで見られてよかったです。
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