気になっていた作品が4Kリマスター版で上映されていたので鑑賞。1993年に公開され演技・演出・カメラワーク・構成などが素晴らしく相米慎二の傑作と言われている作品。
離婚を前提に別居する両親の間で葛藤しながら周囲の人々との交流を通して成長し、未来へと力いっぱい疾走する11歳の女の子の物語。
見初めてすぐに映る、家の居間に置かれた三角形のテーブルに衝撃を受ける。それぞれの辺に親子3人が座り食事する斬新な構図と気まずい空気。
走って軽トラに飛び乗るレンコ、自転車を押して坂道を上って、雨が降り出して駆け下りていく、アルコールランプの火種、母ナズナから逃げバスに飛び乗るレンコが鮮烈。しっかり者で気が強く元気が良い。大人の都合で揺れ動く繊細な心、不憫な状況の中で真っ直ぐぶつける言葉がとても子供らしい。脇役のイメージがあるけど田畑智子ってこんなにインパクトがある演技で子役デビューしてたんだとはじめて知った。
前半の長回しの気まずい家族劇、立てこもり計画が狂い風呂場に逃げ込むレンコのもとに家族と謎のワケありカップルっぽい父の友達が集まり「なんで産んだの!」からガラスを割る母の血での山場。後半の急な死生観を感じるような雰囲気と人間の世界ならざる場所へ招き入れられるような表現が衝撃的。急に千と千尋とかジブリっぽかった。
アルコールランプの火種、転校生と雨、たいまつの火、花火、祭りの灯籠、湖、川、森の夜。懐かしい日本の風景だけどどこかヒリヒリするような気持ちと危なっかしさがあり、特に琵琶湖での水をかけたお爺さんとの会話、レンコが1人で夜の森を彷徨うシーンと湖のシーンは死の世界を感じハラハラしてしまった。
何事も無かったかのような朝、母との電車での帰り道。何とも言えない不思議な表現だなと思う。過去と決別し、受け入れ、自分を抱きしめて未来へと進む少女。すごく印象的な物語の描き方の作品、リマスターを劇場で観れて良かった。
母ナズナ役の桜田淳子さんも良い演技だったのに、これで引退したんだね。