退職してから長い期間が経った独り身の元大学教授。毎食きちんと料理を作り、雑誌の連載も持っている。博識で聡明。節々に大人の余裕と気品を感じる。一見地味に見えても、日々の暮らしを疎かにせず、丁寧に過ごしていると自然と人が寄ってくる。でも落とし穴は大小様々身の回りに存在する。病気、色欲、失職、詐欺、友人との死別、ご近所トラブル、そして己。夢か現か分からない混在した展開は近年それほど珍しくないが、「敵」という観点で見ると面白い。前半の「PERFECT DAYS」的展開から繰り広げられる後半は予測もつかない。余りの急展開に「そんな！うそ！」と言う言葉が度々劇場に響いた。自分の「敵」は何なんだろう。
