【人はなぜこの映画を見るのか】1
2025年初映画。上映館の予約状況を見るとどこも満席状態らしく、精神に変調を来した娘とそれを認めようとしない親の20年間の記録という、地味かつ答えも救いもあまりない映画を、みんな何を求めて見に行くのだろうかと気になってしまう。
統合失調症は病名もよい薬もある、確立された病気だ。だから普通に考えれば、どうすればよかったか?の答えは「医者に行け」だ。でもそれができなかった。「なんでそんなに長い間、医者に連れて行かなかった(行けなかった)の?」という興味から見ている人は多いだろう。
単純にインテリ一家に訪れた不幸を見たい人もいるだろうし、もっと野次馬的に病気の実像を知りたいと思ってる人も多いと思う。私の鑑賞の動機はこれに近い。
でもそれとは別に、引きこもりなどで子供が家にずっといる親、またはそんな状態の予備軍であったり周りにそういう家庭があるひとたちが、なにかのヒントや共感を求めて見にきてるんじゃないかしら。高齢者多めの観客を見て、そんな気がした。
しかし何が怖いって、ラスト近くの父親の発言は、90も過ぎた人を責めるのは酷かもしれないがあまりにもあんまりだった。ただ、これだけが本音というわけではないんだろうけど、この話を引き出した監督の粘りには脱帽しかないし、絶望は深いだろうなあ。