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どうすればよかったか?のyukoのレビュー・感想・評価

どうすればよかったか?(2024年製作の映画)
3.6
音楽もテロップもなく、劇的な編集もせずに、そのままを撮る新鮮さ。ザノンフィクションが撮ったらまた全然違う演出になっていたんだろうな。

この作品ではひたすらに弟目線の我が入ってしまっている違和感。弟以外の家族それぞれの目線で拾った、群像ドキュメンタリーなら印象はもっと違うものになったはず。弟意外の家族にとってフェアじゃない気がした。

結局ほんとのところは聞けずじまいで、何も誰にも分かりようがない。それは私たちの家族や友人にも言えることなんじゃないか。父が死んだ時、本当は何をおもってどう生きてきたか、長年の関係があったにも関わらず何も分からず終わってしまった。結局私の知る彼は、本当の彼ではなかったのではないかという思いが込み上げてきたのだが、その事を思い出した。

このドキュメンタリーの母親、父親、姉、それぞれが何を大事に生きてきたか、何を守ろうとしていたのか、結局は何も分からなかった。それを毎日面倒を見ているわけでもない弟がふらっと帰ってきて、撮った画に真実は見えなかったし、綺麗事に映った。姉に対して無責任でいられる立場の、弟目線の演出に思えた。父母や姉本人の想いを聞きたかった。

この場合余計な立ち位置や意見を消して、ただ、撮る。それだけで成立したのでは。

人がいたら人の数だけ人生がある。ドラマになるかは別として。演出というものはつくづく怖い。ドキュメンタリーだって、演出が入れば素のままの事実なんて簡単に捻じ曲がる。拗けた人間関係や歪な家族像など、世の中に無数にあって、自分とて人ごとではないし、人が壊れゆく様よりも、煌びやかな成功みたいなみんなが見たがるものばかり世の中は垂れ流すが、市井の現実をただ撮るだけで、ドキュメンタリーになったはず。自分も同じだ、例外ではないのだと。

どうすればよかったか、誰しもが過去を振り返るが、今、なるようになったのだと考えるようにしている。答えが無い問いだ。

だけどなぜだろう、見終わってからもじわじわと、お姉さんがカメラに向かって穏やかにピースする画がずっとずっと心に残っている。いいドキュメンタリーは、強烈にその人の残り香を置いていく。
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