【第25回東京フィルメックス コンペティション部門出品】
チューン・ミン・クイ監督作品。カンヌ映画祭ある視点部門に出品されたものの、ベトナムでは上映禁止になっている。
流石フィルメックス出品作だけあって映像は美しい。しかし物語があまりにも観念的で刺激に欠ける。ベトナム戦争のもたらした悲劇、クィアとして生きることの難しさなどテーマは至極真っ当で重要なものの、これではあまりにも観客を無視している。
端的に言って今あらすじを読んで初めて理解したことが多い。観ている間は観念的なセリフの数々と美しいがまとまりのない映像に辟易してしまった。
重要なテーマを伝えている作品には違いないが、この手法だと伝えるべき観客層にもアプローチできないのではないだろうか。
観る睡眠促進剤といった趣で、実際何度か眠ってしまった。記憶が飛び飛びになった自分が悪いのかもしれないが、正直ずっと起きていたとしても理解できなかったと思う。
戦争、クィアというテーマを扱いながらも観客を置き去りにする語り口は残念。クオリティは高いと思うが、多くの観客に広くアプローチができないこの手法は果たして必要なものだったのだろうか。期待していただけに残念な作品だった。