スウェーデンのイラストレーター、シモン・ストーレンハーグによるビジュアルブックを原作に、マーベル映画「キャプテン・アメリカ」シリーズの脚本を手掛けたスティーヴン・マクフィーリー、クリストファー・マルクスと、同じくマーベルの「アベンジャーズ / エンドゲーム」等の監督を手掛けたことで有名なルッソ兄弟によって製作されたSFアドベンチャー。
原作のディストピア感に満ちた不気味な世界観が大好きだったことと、コミック映画の頂点といってもいいだろう「エンドゲーム」のルッソ兄弟が監督すると知って以来楽しみにしていたのだけれど、待ちに待った予告篇を観た時になんだか少し原作よりもキャッチー過ぎる空気感が気になり、本篇公開までもやもやしてしまっていた。
そのもやもやは本篇を鑑賞してもほぼ変わらずで、原作が持っていた奇妙な世界観への想像が無限に拡がるような感覚は得ることが難しかったけれど、単品の映画としての完成度は高いとも感じた。
今作の舞台は1990年代のアメリカでありながら、1950年代に自律型ロボットが開発されたところが歴史の分岐点となり、我々が知るそれとは違う世界の物語になっている。
自律型ロボット達の反乱と、その拡大によって起きたロボット対人間の戦争で荒廃してしまった別世界の描かれ方が面白い。
ロボットたちの造形は、どのキャラクターにも別世界の歴史の変遷を想像させる個性があってとても魅力的だけれど、その中でもキーパーソン (キーロボット) になるキャラクターは私達の世界にも実際に存在する超有名な意匠がもとになっており、SFならではの「if (もしも)」を感じ、ゾクゾクするような興奮を覚えた。
脚本は良くも悪くも複雑さを極力排除した内容にハリウッドナイズされており、起承転結がしっかりあって、主要な登場人物とロボット達それぞれのドラマもありながらそのキャラクターアークが収まるべきところに収まる形になっている。
「エンドゲーム」級の超大規模なアクションやバトルを期待すると寂しい気持ちになるかも知れないけれど、終盤における決戦シーンには何度か見直したくなるほどかっこいいと感じるアングルや演出がいくつかあった。
出演俳優は、主人公を演じるミリー・ボビー・ブラウン、なりゆきでその主人公を助けることになる密輸業者を演じるクリス・プラットの2人を中心に、キー・ホイ・クァン、スタンリー・トゥッチ、ジャンカルロ・エスポジートといったスター俳優達が脇を固め、それぞれ素晴らしい演技をしている。
その中でも、ロボットの声優として出演するウディ・ハレルソンとアンソニー・マッキーの演技が特に印象に残った。
特にウディ・ハレルソンが演じるキャラクターの表情や台詞、そして勇姿には何度もグッときてしまった。
製作費がとんでもない額になっているといった話や、映画評論家からの評価が低いといった話もあるようだけれど、単品のSF映画としては十分に面白い。
原作の不気味で寒々しい世界観にもう少しだけ寄せて欲しかった気持ちはあるけれど… そうするとメジャー感が薄まってマニアックになってしまいそうだし、より多くの人に観てもらうための娯楽映画としては、キャッチーなトーンでまとめることが正解なのだろう。
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