例えていうなら、新進気鋭・人気急上昇で話題沸騰、その評判に違わぬ劇作家による演劇を観劇している感じ。ホテルという限られた空間のなかで。残された12名。ホテルの四方はアレが取り囲む。アレは、時折咆哮に近い地響きでその存在を主張する
ホテル内は滅菌されているかのように塵ひとつない。その潔癖なまでのキレイさが、その空間を特別なものへと昇格させる。ホテル内での会話劇で動きが少なくなってしまうところを、色彩鮮やかなフラッシュとか(なんと称したらよいのかよくわからない)、藤原季節さんがたったひとりで小型のアレを想起させるものと戯れる空間の独特な色味だとか、ホテルの廊下の色彩と照明の工夫だとか、そういったものを加味して独特な世界を創り上げたのだと思う
タイトルもいい。四方がこの場所を取り囲むならば、そして非暴力・不干渉・相互扶助を守れるのであるならば、ここはユートピアになるのかもしれない。アレが取り囲んでいるからこそ、ここはユートピアに成り得るのかもしれない
わたしの勝手な思い込みだけど、この空間は横への移動はオッケー、でも地下世界へと続くものに対しては不穏。階段など下っていくことについては脅威を描いていたような。それも面白いと感じました。
最後の晩餐的な画は、“あれっユダはどこに座ってたっけ?”と脳内の記憶を呼び起こそうとしたけれど、この映画においてどこまで深い意味があったのかはいつか機会があったら考えてみたいと思う