明らかに修復不可能な亀裂のある家族像がとてもリアルで、娘のポールダンス大会のための家族旅行が本来は最後の一家団欒になる予定だったことがひしひしと伝わってくる。
旅先で家族全員がそれぞれと向き合う時間ができ、新しい人と出会い、環境が変わったことで表面的な空気が変わり……。
新しい場所に行くと今までの自分を(適応のために)ある程度客観視して変化させる必要があるから、その過程でこれまでの関係もついでに整理されるんだと思う。
子守をすることになったグスタフが今までのステラのようにマンネの様子を気にするのも、環境によって各々に求められる役割が変化し、良くも悪くも以前とは異なる役割を引き受けざるを得なくなるから。
家族の再生、という家族主義の強化に陥りそうな題材ながら、人間関係が実は流動的なものであるというメッセージに帰結するのが現代的で巧い。
ポールダンスをするのが女性の場合だけストリップと結びつけられるというのも、身近に転がっているジェンダーバイアスを可視化していてとても良い視点。
全ての事柄において状況が好転していくので出来過ぎに思えてしまうのと、結局二人で共通の時間を過ごすことが至上だという、一人で生きている人を周縁化する終わり方は数多の家族映画と変わらない保守的な点。
現在の関係から距離を置くための不倫について同意が交わされるのは規範を解体し得るシーン……かと思いきや結果的に全然そうじゃなかったので、全体的にあと一声足りない映画。