きよぼん

死に損なった男のきよぼんのレビュー・感想・評価

死に損なった男(2024年製作の映画)
3.6
もう一回みなきゃだな(´д`)

自転車にぶつかられて謝ってもくれない、台本の理由を説明する前にガンガンに叩かれ、駅で逆ギレされる。コントの構成作家・関屋は世の中に邪険にされるが、言い返せない毎日。序盤から胸が痛むシーンが多くて心苦しかった。世の中から消えたくなるのって、大きな理由もあるんだけど、こういう小さなダメージの積み重ねってのもあると思う。こういうの堪えるんだ。もちろん物語的誇張ではあるんだけど、心弱ってる人には、世の中ってああいう感じにみえてるもんなんだ。

(!!以下ネタバレというほどでもないけど、神経質な人はとばしてください)

関屋は駅のホームから飛び降りようとする。しかしその直前に他の人身事故が起きたので、死ぬことを免れる。関屋は亡くなった森口(正名僕蔵)の葬式に出かける。

ここね、コントの構成作家だからか、病んでるからなのか、かわったことする人だねーっていう感覚でみてたのよね。完全に読み取り間違い。お笑い芸人の世界が深く関わってくるし、思いっきり笑う映画なのか、マジな映画なのか、焦点を定められずにみちゃった。予告編みても、本編始まっても、どっちにアジャストしたらいいんだろう?って感じでずっと迷ってた。少なくとも自分には笑いをとりにきてんのか、笑っちゃいけないところなのか迷う箇所があって、受け取り方に戸惑ったのだ。

最後まで映画みると、葬式にいくのは彼の本当は生きたい願望の裏返しだと思う。幽霊となった森口から、DVを繰り返す元夫を殺せ、とか言われちゃうけど、やりそうでやれないのを繰り返すのは、笑いどころじゃなくて、彼の生きたい願望だった・・と思う。そこをちゃんとわかった上でみてればなあ。こりゃもう一回みなきゃだわ。これから観る人には、お笑い芸人が出てるけど、笑う映画じゃないですよ、とは伝えておきたいかな。

幽霊の森口との出会いを経て、人生が180度・・いや90度くらい見方が変わる関屋。映画の序盤にあったうっとうしい世界が消えているのが救い。周りが特に何も変わっていないのに、そう見えるのは不思議だな。世の中、幽霊みたいにみえる、みえない、みない、で変わるんだろうな。
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